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【3、幼き召喚士 】

  セシルとカインの二人がミストの村に着いたとき、バロンから渡された指輪が暴走した。
その指輪にはボムというモンスターが数十体も封印されていたのだ。ボムはミストの村を焼き尽くしていく。
「な!?陛下はこのために僕たちにこの指輪を・・!?」
「この村は召喚士の村。そうか、陛下は召喚士を抹殺するつもりだ!!」
 召喚士は大人より子供、男より女のほうが強い能力を持っている。それは女性や子供など、か弱き者のほうに、幻獣が心を開きやすいからである。しかしボムの自爆を食らったら、セシルやカインのような騎士ならともかく、体力のない召喚士などひとたまりもない。この火事の中生き残れるとしても、召喚能力の薄れた体力のある男ぐらいだろう。
                    ☆
 二人があまりのことにボー然としていると、どこからか、幼い女の子の声がする。2人が声のするほうに行ってみると、7歳くらいの女の子が、女性の死体にすがって泣いていた。カインは槍を身構えた。
「陛下がこの村を焼き滅ぼそうとした。ということは『女子供とはいえ容赦するな』ということだ。いや、むしろ『女の子なら高い能力を持っているから、なおさら生かしておくな』と言うかもしれないな。」
 セシルはカインを止めた。
「いくら陛下の命令でもあんな小さな女の子を殺すなんて許せない。もう元の地位なんてどうでもいい。近頃の陛下の言動はやっぱりおかしい。バロンに戻って陛下に意見させてもらう!!」
 カインはセシルらしいと苦笑した。
「確かにお前の言うとおりだ。ちょっとあの子と話をしてみるか。」
 2人は女の子に近づいた。緑色の髪のとても愛らしい女の子だった。大人になったらさぞかし美人になるだろう。女の子は泣きながら母親のことを話した。
「お母さんの呼び出したドラゴンが殺されたらお母さんも死んじゃったの・・。」
「!えっ、じゃあ僕たちが倒したドラゴンって・・。」
「どうやらこの子の母親が呼び出していたわけだな。」
 女の子は2人の会話を聞いて、顔をこわばらせる。
「えっ!!じゃあお兄ちゃんたちがドラゴンを・・。」
「セシル、どうする?」
「このままここにいたら危険だ。この子も連れて行こう!」
 とにかくこの村から逃げたほうがいいとセシルは思った。特にこの炎で女の子は少し弱っているようである。しかし、セシルとカインが近づこうとすると、女の子はおびえて後ずさりした。そしてその時大きく地面が揺れだした。
「な、何だ、この地震は!?」
「おい、あの巨人はどこから現れたのだ!?」
 2人が見知らぬ巨人の出現に驚いている間はなかった。とてつもなく大きな地割れが起き、セシルとカインはその激しい衝撃によって次第に意識が遠のいていった。
                    ☆
 セシルが意識を取り戻すと、全く見知らぬ場所にいた。女の子の呼び出したタイタンによって、地形が変わってしまったようである。
「カインとあの女の子はどうしただろう?」
 セシルが辺りを見回すと、あの女の子が倒れていた。しかしカインは見つからなかった。
「カインのことだから大丈夫とは思うが・・問題はこの子だ!」
 女の子の力でタイタンを呼び出したのはかなり体力的にきつかったのだろう。ひどく顔色が悪く、熱もある。
「とにかくこの子を休ませなくては。」
 セシルは女の子を抱き上げ、近くに町はないかと探し歩いた。
                    ☆
 幼い召喚士の女の子リディアは、悪夢にうなされていた。ミストが炎に包まれ、ドラゴンも、母も、他の召喚士たちも悲鳴をあげて倒れていく。
「いやー!やめて!!」
 リディアも逃げようとするが、炎は自分にも襲い掛かってくる。そしてそんなリディア目の前には暗黒騎士が現れて、剣を抜いて自分に襲い掛かってくる。
「助けて!!」
 リディアが叫ぶと、それらは消えていた。リディアは夢を見ていたとやっと気づいた。
全身汗だくになっている。
「ずいぶんうなされていたね。もう大丈夫かい?」
 セシルはずっとリディアを見守っていた。リディアは自分の故郷を焼き払い、母を殺したこの暗黒騎士の若者に対して、憎しみと恐怖の念を今も抱いていた。リディアはセシルと口を利こうとはしなかった。セシルがしたことを思えば当然の反応ではある。
「僕は君に許してもらおうなんて思っていない。だけど、せめて償いとして君を守らせて欲しいと思う。」
 リディアはその言葉を聞き、そっとセシルを見た。兜を外した彼の顔は、整っていて優しそうに見えた。だが、まだ心を開く気にはなれなかった。こんな優しい言葉をかけておいて自分を安心させ殺すつもりかもしれない。
 リディアがそう思っていると外から騒がしい声が聞こえてきた。数名のバロンの兵士がどかどかと入り込んできた。
「陛下はたとえ子供といえども召喚士は生かしておくなと言っております。セシル殿、その子は我々に渡してもらいましょう。陛下もそうすればお許しになるとのことです。」
「ダメだ。その子には指一本たりとも触れさせない!!」
 セシルはリディアをかばうようにバロンの兵士に前に立ちはだかった。
「ならば仕方がありません。元隊長といえども容赦しませんよ!!」
 セシルは数人の兵士を相手に戦った。暗黒騎士であるセシルにとってたとえ複数でもザコ同然であった。兵士たちは怪我を負うとやはりセシルには敵わないと、ほうほうの体で退却していった。だが、暗黒剣の力を使ったのでいくらか自分もダメージを食らってしまった。
「大丈夫?」
 リディアはセシルの身を案じて回復の魔法ケアルをかけようとした。セシルはこれ位のダメージはいつものことだった。
「大丈夫。少し眠ったら回復するよ。」
「ごめんなさい、あたしのために。」
 リディアは母親の仇ということも忘れて心からセシルに感謝した。セシルは心が痛んだ。
「あやまるのは僕のほうさ。それもあやまって許されるようなことじゃない。」
「でも守ってくれた。」
 リディアの優しい笑みにセシルは言葉をつまらせた。この幼い少女は自分の母を殺した男になんと言う汚れない表情をむけるのだろうか。セシルはこれからもリディアを守ろうと心に誓った。だが、それを言葉にすることはできなかった。リディアの無垢な心にセシルは感動すら覚えた。
「あたしはリディア。お兄ちゃん、名前を教えて!」
「僕はセシルだ。」
「ありがとう、セシル!」
 リディアはそう言って天使のような顔で再び眠りについた。今度はいい夢が見られそうな気がした。

第4話 「謎の美少女」
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