Peppermint Breezeに行きます! Pastel Midilinに行きます!
リンクについてはこちら♪
リディア同盟とは リディアイラスト リディア小説
リディア会員名簿 掲示板
リンク
 
 

 
【31、よみがえった四天王】

 巨人の口から巨人の内部に入ったセシル達は、顔の部分から頸部、胸部、腹部を通ってさらに奥の通路までやってきた。中の作りは、ゾットの塔や、バブイルの塔に似た作りだけだった。途中で出くわす敵も機械系のモンスターばかりであった。
「思ったよりも敵がうろちょろしてやがるな?」
「あたし達は巨人にとってはウィルスのようなものだからね。敵はそれに対する免疫体ってところじゃないの?」
 エッジとリディアはこんな時でも明るく会話している。セシル達はこの2人の明るさに救いを感じていた。自分1人だったら暗くなって落ち込んでいたに違いない。
「しかしこの通路は巨人のどの部分であろう?」
「まあ、行けるところまで行ってみようぜ!!」
 月の民フースーヤがパーティのブレインとなって冷静にどこにいくべきか指示をしてくれていた。だが、少し迷ってしまったようである。エッジはそれでも前向きであった。
                    ☆
 彼らは巨人内部の吹き抜けまでやってきた。まだどこかにつながっているようだった。
「ん?何だか魔物の臭いがプンプンしやがるぜ!」
「本当!何か嫌な感じ!!」
「でもこの感じはどこかで・・?」
「セシル、後ろ!!」
 セシルがローザに言われて振り返るとそこには試練の山で確かに倒したはずのスカルミリョーネがいた。
「また会えるとは・・。我らはゼムス様の力によって再びこの世に生を受けたのだ!」
「お前たちへの恨みを忘れたわけではない!!」
 スカルミリョーネだけではない。その隣には青い不気味な身体をしたカイナッツォもいた。さらにセシル達の前方には長い金髪をなびかせた美女バルバリシアも現れ、さらに赤いマントに身を包んだルビカンテも現れた。
「ゾットの塔での屈辱をはらさせてもらうよ!」
「我々はお前たちに教えられた。協力して戦うということを!今度こそ正々堂々と戦おうではないか!!」
 ルビカンテはそう言ってセシル達をまた回復してくれた。
「貴様の相手はこのエッジ様だ!!覚悟しろよ、ルビカンテ!!」
 エッジは両親を殺された恨みを持つルビカンテの相手をしようと真っ先に斬りかかっていった。
「じゃあ、アタシの相手はあんただよ、ローザ!!」
「わかったわ、相手になるわ!」
 バルバリシアはローザを指名してきた。ローザはうなずいて相手になっていた。
「フシュルルル、私の相手はその緑色の髪をした娘にしようか?」
 スカルミリョーネは一番弱そうに見えるリディアと戦うことを選んだ。もっともそれが実は大きな誤りだと後に気付かされることになったが、狡猾な彼らしいやり口ではあった。
「フン、俺の相手はまたセシルか。今度は負けないからな!」
 セシルはカイナッツォと戦うことにした。セシルはこの男にだけは負けたくないと思った。カイナッツォは国を恐怖に陥れ、バロンを殺害した張本人なのだから。
 フースーヤはこの4人の回復役に徹することにした。まもなくそれぞれの戦いがはじまった。
                    ☆
 リディアはスカルミリョーネを追い詰めた。スカルミリョーネの弱点が炎とわかり、炎の幻獣イフリートを召喚した。イフリートの口から吐き出される地獄の火炎と呼ばれる炎をあびて、スカルミリョーネは自分の相手にリディアを選んだことを後悔した。しかし狡賢いスカルミリョーネは、リディアの中のトラウマを利用しようと企み、彼女を惑わそうとした。
 リディアの周りの風景が、巨人の内部の吹き抜けではなく、炎に包まれたミストの村へと変っていた。
「エッ!ここは?!」
 リディアが周りを見回すと、誰かが自分を呼ぶ声がする。どこか聞き覚えのあるなつかしい女性の声である。
「リディア、リディア・・!」
「お、お母さん?!」
 スカルミリョーネの姿はなく、そこには炎に包まれた母の姿があった。
「お母さん、どうして?」
「リディア、熱いわ、苦しいわ!助けて!!」
「お母さん、待って!今助けるから!!」
 リディアは母の手を引いて逃げようと試みる。母はセシルを指差して憎々しげに言った。
「あの男が私たちの村を焼いたの!私をこんな目にあわせたのも!!」
 リディアは母に言われるままに召喚魔法を唱えようとした。しかし彼女は呪文を言い終わる前に口を閉じた。
「あなたは一体誰?」
 リディアは母をにらみつけるように言った。
「リディア、私がわからないの?お母さんよ!」
「お母さんは死んだはず!!」
 リディアがそう言うと、偽者の母親の姿が歪みはじめた。そしてそれはドス黒い塊となっていった。リディアは再びイフリートを召喚した。イフリートはその塊を焼き尽くしていく。やがて風景は元に戻り、そこには虫の息となったスカルミリョーネがいた。
「我が幻覚を破るとは・・!口悔しや・・。」
 スカルミリョーネはただこう言い残して息絶えた。リディアは本当の敵はスカルミリョーネではなく自分の心の闇だったのではないかと思った。
「あたしはまだ完全にセシル達を許せてない。でも本当に憎むべきは人の心に巣食う邪悪な感情だってこと知っているよ。」
 リディアはそう言ってスカルミリョーネの残骸を憐れむように見ていた。
                    ☆
 カイナッツォと戦うセシルは苦戦していた。
「フン、パラディンなどといっても口ほどにもない。お前の力はこの程度か?!」
「どうしてダメージをほとんど受けない?!」
 セシルはずっと攻撃をしているのに全くカイナッツォに効いていないのだった。逆にカイナッツォは津波攻撃にて反撃をしてくる。
「ウウッ!」
 セシルは肩膝をついた。負けたくない。カイナッツォへの恨みは忘れたわけではない。バロンの仇を何としてもとりたい。しかしそんな彼に何者かの声が聞こえてきた。
「セシルよ。憎しみの心で相手を倒そうとしても自分に身を滅ぼすだけじゃ。わしがそのことを、身をもって証明したではないか?」
「あ、あなたはテラ?!」
 セシルの前にはゴルベーザとの戦いで命を落としたテラが現れた。隣には娘のアンナがいた。あの世で幸せに暮らしているのだろう。とても穏やかな表情を浮かべていた。
「セシル、わが息子よ・・!」
「その声は?!」
 聞き覚えのある声だった。だがその姿ははじめて見た。自分によく似たパラディンと美しい女性である。
「セシル、お前にパラディンの力を与えたのは愛するこの星を守るため。憎い敵を倒すためなどではない!!」
「クルーヤ・・父さん!!」
 セシルは立ち上がった。自分はカイナッツォを憎むあまり冷静に相手の動きを見切れなかったのではないだろうか。
「セシルよ、よく気が付いた。それでこそ我が息子!!」
 クルーヤではない。セシルを息子と呼ぶ者はもう1人いた。気高い魂を持った騎士の中の騎士。死して幻界の聖騎士オーディンとなったバロンである。
「セシルよ。私のことで哀しむことはない。私の肉体は滅びようとも騎士としての魂は永遠に生き続けるのだから。」
「陛下!!」
 セシルの目には涙が浮かんでいた。カイナッツォには死んだ者の姿は見えていないようだった。
「どうしたのだ?このオレの力の前に臆病風でもふかせておるのか?」
 あざ笑うカイナッツォにセシルは聖なる光の剣を向けた。
「カイナッツォ、お前は多くの人を傷つけ、命を奪うことに何も感じないのか?!」
「何をくだらないことをほざいておる?」
 カイナッツォは津波攻撃で一気にセシルを始末しようと試みた。セシルはカイナッツォのすきをねらって、その懐に飛び込み剣を突き刺した。その上動きを封じられたカイナッツォにさらに電撃が襲いかかった。
「青い牙だ。いかにお前が頑強な肉体を誇っていても聖剣と雷攻撃を同時にくらってはたまらないだろう?」
「うう、まだ死にたくない・・!せっかく再び生を受けたというのに!!」
 カイナッツォは最期にこう言って息絶えた。
「カイナッツォ、僕はお前を憐れに思う。せめてお前とお前の奪ってきた命のために祈るよ。」
 セシルは静かに彼らのために冥福を祈っていた。そんなセシルを見守っていた死人達の頭上には、赤々と燃える炎の鳥がいた。死人達はセシルを見守りながらうなずきあって、その火の鳥の中に引き寄せられていった。
                    ☆
 エッジはルビカンテといい勝負をしていた。
「ほう、強くなったな。私も以前より強化して生まれ変わったのだが・・。」
「俺はどうあっても負けられないからな!」
 エッジは実はかなり体力的にきつかったのだが、それを補うかのような気迫でルビカンテと戦っていた。
「そんなにしてまで両親の仇をとりたいのか?」
 ルビカンテはなぜか少し寂しげに言った。
「確かにてめえが俺の親父やお袋をぶっ殺したことは許さねえ!だが、俺はそんなちっぽけなことのために戦っているわけじゃねえ!」
 エッジの目には一瞬リディアの姿が映った。リディアはこの時スカルミリョーネと戦っていた。しかし今彼が戦うべき相手は目の前にいる赤いマントを着た精悍な男である。
「あいつは今あんなふうに戦っているが、俺はあいつにはもっと笑っていて欲しいと思っている。あいつがあんなふうに戦わなくてもいいように、この世界を元の平和な世界に戻したい。だからこんなところでてめえの足止めをくらっているわけにはいかねえんだ!!」
 エッジは渾身の力を込めてルビカンテに斬りかかった。エッジの右手には忍刀菊一文字が、そして左手には氷の爪が装備されていた。いつもならこの左手には、忍刀か円月輪と呼ばれる手投げの武器が装備されているのだが、冷気を弱点とするルビカンテには武器に氷属性を持たせて攻撃したほうがよいと、エッジはとっさに判断したのである。エッジの読みは見事に当たり、ルビカンテは致命傷を負い、倒れた。
「見事だ!それにしても好きな女のために戦うとはうらやましい話だ。」
「あん?まだてめえ何かいうつもりか?!」
 エッジはとどめをさそうと菊一文字をルビカンテののど元に向けていたが、ルビカンテが何か心残りな様子であることに気が付いた。
「死に逝く者の頼みを聞いてはくれぬか?このようなことを頼める義理ではないのだが・・。」
 憎い親の仇ではあるが、エッジは死を目前にした男の頼みを聞いてやることにした。エッジはこう見えても心優しい青年なのだ。
「私も好きな女がいる。あの女は我々の仲間ではあるが、元は心正しき幻獣なのだ。悪しき月の民に自分達の仲間を殺され、利用され、その憎しみゆえに闇に落ちたのだ。私はどれほどお前達に恨まれてもかまわぬ。それだけのことをしてきたのだ。しかしバルバリシアだけは許してやってくれ!頼む!!」
 ルビカンテはそう言って息を引き取った。エッジはルビカンテの身体を丁寧に横たえてやり、その両目を閉じた。
                    ☆
 ローザはバルバリシアと戦いたくはなかった。だが、バルバリシアはローザに容赦なく襲い掛かってきた。
「どうして、あなたは戦うの?こんな戦い無意味だってわかっているはずよ!?」
「問答無用!アタシは人間が憎いのさ。そしてあんたも!」
 だが、バルバリシアの瞳には憎しみの色よりも、もっと深い哀しみの色が感じられた。そして彼女の攻撃が激しくなるに従ってそれはいっそう強く現れた。
「アタシは所詮戦闘の道具。あんた達を抹殺するために生き返ったにすぎないよ。アタシはその運命に従うしかないのさ!!」
 ローザは彼女を哀れに思った。しかしだからといってやられるわけにはいかない。自分達にはこの後やらなければならないことがあるのだ。
「バルバリシア、私はあなたには何の恨みもないけれど、ここで命を落とすわけにはいかないのよ!」
 ローザは呪文の構えをとった。白魔道士であるローザにとってもっとも強力な攻撃魔法ホーリーである。聖なる光がバルバリシアの身体を包み込んだ。バルバリシアはゆっくりと倒れていった。
「見事だね、さすがアタシが見込んだだけのことはある!!」
「バルバリシア、あなたまさか最初から死ぬつもりで?!」
 彼女に駈け寄ったローザの頬に涙がつたう。バルバリシアは半身を起こしてローザのその涙をふいてやった。
「泣くことはないだろう。これでもうあんたと戦わなくてすむ。だから哀しまないでよ。カインが好きなあんたはそんな情けない女じゃないだろう!!」
 バルバリシアの表情は穏やかでこの上なく美しかった。ローザはバルバリシアにケアルをかけた。
「あなたを死なせたくないわ。お願い、このまま私達を通して!!」
 バルバリシアはあきれたように笑った。
「全く信じられないお人好しだね。でも、カインがどうしてあんたが好きなのかわかったよ。」
 バルバリシアはそう言ってつむじ風と共に行ってしまった。

第32話 「和解」
第30話 「バブイルの巨人」に戻ります
小説目次に戻ります