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FINAL FANTASYⅣ-恋い焦がれる異国の王-<第一話>


一人の老人が、己の主宛ての文書を難しい顔付きで見つめながら も、ある部屋目指して廊下を足早に歩いていた。
当然、老人が目指す部屋はその主の場所であり、悩みの種でもあ った。ここ数ヶ月悩めない日なぞ存在しないに等しい。
いや、あの主だからこそ悩む種が尽きないという考えが正しいとい えよう。
(儂は代々ジェラルダイン王家を支えてきた由緒正しき家系の生ま れだが、今の若様は・・・。)
老人はもうすぐ到達するであろう、主の部屋に嫌気をさしつつ、大 きな溜息を一つついた。
実はこの老人、忍術という一子相伝の技を持つ忍者の家系ジェラ ルダイン王家に仕える家臣の一人である。立場は代々の王の相談 役の立場であり、または世継ぎの世話役を務めたりもする。
この国独自の言い方で『家老』と呼ばれる、王の次に位の高い立 場である。また大体の国の運営はこの家老がこなしている。
他の国で言う宮廷魔術師と似た、立場と考えても良い。
「着いてしまったか・・。」
当り前のことを老人、テシンは主の扉の前で呟く。
扉の前では刀と呼ばれる、この国独自の剣を帯びた戦士が二人警 護にあたっていた。その内の一人がテシンを見ると敬礼をし、同僚 の行動を追うかのようにもう一人の戦士もテシンに向かい慌てて敬 礼をする。
「御家老様、ご苦労様です。」
「うむ。ところで、やはり若はおられるか。」
ささやかな期待を胸にテシンは二人の戦士に問う。
「ええ、おられます。どうやら、御家老様を心待ちにしていたご様子 でしたが・・・。」

記憶を辿るような素振りを見せつつ、テシンの問いに戦士は受け答 えた。
(覚悟を決めるしかないか)老人はもろくも崩れ去った期待に絶望 しつつも、手元にある文書を恨めしそうに見やった。
(そもそもリディア殿も、リディア殿もですぞ・・。)
手紙の送り主にも、非があることを伝えるかのようにテシンは心の 中で訴えた。遠くの相手の心に直接訴えかける能力があるらしい が、テシンにはそのような能力なぞ無い。
これ程までにその能力がほしいと思ったことないだろう。
世界を救った英雄の一人とはいえ、このようなことが許されて良い のであろうか?運命の神の非業さに打ち拉がれつつ、老人は両開 きの扉を開くよう二人の部下に命じるのであった。
「待っていたぜ!!」
待ちわびた家老の登場に、歓喜の表情を見せつつ、ここジェラルダ イン国の当主エドワード=ジェラルダイン七世はテシンを出迎えた。
歳は二十七、またこの世界を救った英雄の一人でもあった。
そのため、先程のリディアとエドワード=ジェラルダイン、通称エッ ジは共に世界を救った戦友である。
その他に現バロン王国のセシル王、ローザ妃。今でも己を鍛錬して いる孤高の竜騎士カインなども共に世を救った仲間達である。
聖騎士セシルは、突然の王の失脚とゴルベーザによる王国の混乱 を立て直すために月より帰還した後、すぐさまバロン国王に戴冠し た。
セシルはその実力、人柄はよく知れ渡っているがため、特に止まる ことなく王に任命された。
バロン国は世襲制の国王制度ではなく、王が玉座を降りるとき度に 重鎮達による選定会議が行われる。
国歴を見る限り、大体は近衛部隊、竜騎士部隊の部隊長が選ば れるのが多い。
飛空艇団、暗黒騎士団は前国王が健在のときに初めて導入され た部隊でそれら二部隊から選出されることはなかった。
セシルは元暗黒騎士団部隊長、飛空艇団部隊長を担ってきたが、 偽の王からその地位を剥奪されており、残念ながら初の二部隊出 身の国王とはならなかった。
しかし、試練の山と呼ばれる過酷な試練に打ち勝ち『パラディン』と 呼ばれる聖なる称号を授かっていた。
故に、バロンは聖王セシルの収める聖王国といわれおり、また即 位と同時に真の闇に立ち向かうことが出来ない暗黒騎士団を解散 し、新たに『聖騎士団』を初編成した。
白魔道士ローザもその傍らで、妃としてセシル王を支えている。
竜騎士カインは、セシルが聖騎士となった『試練の山』で己を鍛錬 し、二度に渡る友との裏切りをした己の心をも見つめ直していた。
特に、ゴルベーザの術に操られたとはいえ、世界を破滅に導く手 助けをした自分の心の脆さを痛感したカインは、心の鍛錬を重点的 に行っている。
『父をも越える真の竜騎士』を胸に。
召喚士リディアは無事に帰還した後、地下世界に存在する『幻獣 界』に赴いた。この世界と幻獣界とは時間の流れが違うため、長居 はしなかったが幻獣王リヴァイアサン、幻獣女王アスラに、全てが 正しい方向に事が進み出したことを笑顔をこぼしながら報告した。
その後は、バロンの北に存在する自分の故郷に戻り、よき魔道士 を育むために教鞭を振るっている。
そのリディアに、この若き国王は恋心を抱いてしまったのだ。
リディアは、特別な血縁『召喚士の血』を引いてはいるが、地位的 には城下町を歩く娘達とほぼ変わらない。
エッジの国である、このエブラーナはバロンとは違い、世襲制の王 国体勢である。エッジも例外にもることなく、前王要するに自分の 父が無くなったと同時に王権が自分に渡ってくる。
当然、拒むことは出来ない。
また、妃となる者も貴族の出の者や、エブラーナに点在する部族の 長の娘が多い。
街娘、村娘と縁を結んだ記録なぞ、エブラーナの系図を見る限り、 前例を見ないと断言できる。
英雄の一人とはいえ、自国の王にこれ以上関わり合ってほしくない のがテシンの本心である。
しかも、普通の関わり合いではない。少しは好いてくれていれば良 いのだが、面白半分で関わっているとしか考えられない行動が多 いのだ。
特に今も持っているこの文書が一番の悩みである。
最初は己の主が初めに、召喚士の娘宛てに文書を送ったのだ。し かも、自分の心の内を伝える文書だったらしい。いわば恋文である 。
それからして、既に愚かとしか言えないのだが、相手の召喚士の 娘も律儀に返事を返してくるのだ。
だが、その内容は国王の手紙の返事としては程遠いものであり、 しかも文章を読むにも苦労するようになっている。
いわば、嫌がらせに近い。
初めはさほど難しくない暗号文だったのだが、今では段々と難しく なってゆき、『下位古代文字』と呼ばれる魔術師達が魔道書に記載 するがために使用する文字で返事をよこしている。
暗号文はこの王国では非常に使用され、特に難儀することはなか ったのだが、魔道士が使う文字群となるとお手上げである。
エブラーナは黒魔法、白魔法について各国に非常に離されたレベ ルにあるためだ。軍事国家バロンも魔術には疎いとはいわれてい るが、軍事的に採用されるまでの力がある故、まったく魔術に通じ てないとは言えないのだ。
そのためエブラーナではファイア、ケアル程度の魔法でも使えるも のは数えるほどしか存在しない。
そんな国でも、魔道書は国の書物庫にあり、それを片手にエッジは 諦めることなく、読解しているのだ。
この頃では返事を全て理解するのに、丸三日の時間を割いていた 。
その間の国政のことはそれこそ、手をまったくつけていない。
「さて、今回はなんて書いてあるかな?」
エッジはテシンから受け取った手紙に胸躍るかのように、急いで封 を切り中身を取り出す。
「な、なんだこれは?」
エッジが中の文面に目を通そうとすると、動揺の声を上げた。
(・・・またか・・。)
(今度は何であろうか?『上位古代文字』かもしれぬな。)
テシンは頭をうつむかせながら、半ば自棄な発言を心の中で言った 。
「じい、これは何語だと思う?」
エッジは小首を傾げつつ、文書をテシンに見せる。
そして、受け取ったその文面を見てテシンは苦笑いするしかなかっ た。
「これは、『上位古代文字』ですな。」
まだ、自分の頭が耄碌してないなとつくづく思う。テシンの予感は 見事的中したのだから。
しかし、いっそ耄碌した方がよいとさえ思う。そうすればこの様な悩 みの日々とは縁が無くなるのだから。
勿論本気には思っていない。自分亡きエブラーナを立て直すには 今の国王はまだ未熟だと考えているし、一度壊滅状態に陥ったエ ブラーナも完全に復興したとは言えないのだ。
しかもエブラーナ城陥落を機に不穏な動きを見せている集落もある と聞く。
一時期とも気を緩めることが出来ないのが実状である。
「『上位古代文字』・・。魔法詠唱に使われるあの言葉か?」
エッジがそんなテシンの心の内を理解することなく聞いた。
「左様です。『下位古代文字』よりも更に理解に難を示すでしょう。」
いい加減に諦めてほしいと、テシンは心の奥で願う。ここであきら めの言葉を一言言ってほしいのだ『もうやめる』と。
しかし、次にエッジの口から出る言葉はあまりにも絶望的なもので あった。
「よし!一丁やってやるか!」
威勢のいい声と共に、エッジは気合いを入れる。
(やはりダメか・・・。已むを得ん、本人にあって直接掛け合うしかな かろう。)
既に怒る気力もなく、説得することの無駄を知っている老人は情け ない自分の主を尻目にその場から退出するのであった。

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