【第100話】

盗賊あがりの神父


ゼネテスと話すと大半のことが俺と考えていることが同じだった。

唯一の違いは、ゼネテスはこれからの時代に必要な人であると感じたことに対し、

俺は親方に父親を感じていたことだった。


塔の入り口に時間に皆集まると親方がでてきた。


「では、イシスに向かうぞ。

 時間がないため、ある程度の強行は覚悟しておくように」


そう言うと親方を先頭に一行が歩き出した。


俺達は基本、単独行動が多いため

今回のように軍隊のように大人数での移動は違和感があった。


またゼネテスや俺は兵士を経験がしたことがあるので

戦士としての戦いもできるが、大半のものは

盗賊としての戦い方を主としているため、

はたしてこの集まりで魔物の群れに遭遇したとき

対処できるのかという不安もあった。


だが、これだけの人数が集まっていれば

魔物達も簡単には襲いはしないだろうという思いもあった。


・・・その考えはもろくも崩れ去った。


凶暴化した魔物達は、こちらの人数などおかまいなしに

日中問わず襲ってきた。


しかし、さすが腕に自信があるものが名乗りをあげたのか

負傷者もさほどでず、次々と魔物達を撃退していった。


カサーブにつくと、数時間の休憩が与えられた。


「ルーニ、ついてこい」


親方に言われ、俺は親方に着いていく。


教会にいくと、神父がいた。


「久しぶりですの」


神父は笑顔で親方に声をかけてきた。


神父の年は50過ぎという感じだろうか。

顔には数本のしわが刻まれているが

親方よりは若そうだった。

しかしその目には隙がなかった。


「久しぶりじゃの」


親方もそう返す。


「昔、組織にいたものじゃ」


親方は俺に神父を紹介する。


盗賊あがりか、よく神父になれたな。


「トールという者です。昔、親方にはお世話になりました。

 よろしくお願いいたします」


顔は笑顔で、口調は丁寧だがその裏では何を考えているのかはわからない。


「緊急で申し訳ないが、お主に頼みがあってやってきた」


「お連れの方の左肩の怪我の治療ですか?」


左肩を包帯で固定はしているが、

上から武装をしているので、少し盛り上がっているだけで

一見わからないはずだ。


「話が早い。金は払う」


親方が金が入っている袋を渡す。


「わかりました」


神父は袋をあけようとはせず、袋を懐にしまった。


「ではこちらに来てください」


俺達は奥の部屋に通された。


「そこに座って、武装をといてください」


俺は言われたまま座り、武装をとく。

包帯でまかれた左肩を神父はあちこちさわった。


また痛みがぶりかえし、俺は顔をしかめた。


「・・・くっつきかけてはいるよいですが、まだ完全ではありませんね」


「すぐに治るか?」


「本当は怪我など放ってなおるものは魔法を使わないで

 自然治癒するのが好ましいです。


 魔法で怪我が治ることがあたりまえと思うと

 人は魔法を多用しますし、少しくらいの怪我をしても

 すぐ治ると思ってしまいますからね」


「魔法のありがたみがなくなるってことか?」


俺は神父に尋ねた。


「それもありますが、命の危険性を感じることが少なくなったりします。

 結果、不相応な旅に出て命を落としたりとかですね。

 それと魔法の原理というのは完全に解明されていません。


 一般的には精霊であったり、神の奇跡により、

 魔法が使えると考えられていますが

 たとえば、自然の力を使って、癒しの魔法を使っていた、

 とすれば、どうなるでしょう?」


「どうなるって?

 それは使いつづければ・・・なくなっちゃうってことか?」


「そういうことです。

 あくまで可能性の話ですが、火をつけるのに木を焼くように

 魔法を使うのに自然界の物質から力を使われていれば

 有限であるかもしれないということです。

 今さえよければよい、という考え方は大変危険な考えですね。


 そのため、私は極力薬草などの自然治癒を進めております」


「考えはわかるが、急ぎのようでな」


親方が神父の話を遮った。


「わかりました、魔法を使いましょう」


神父はもごもごと何か言い始めると、

手を俺の左肩にあてた。


やわらかい光が左肩をつつむ。


「どうですか?」


俺は左肩を動かす。

痛みが消えていた。


すごいな。

今までリュックが攻撃の魔法を使ったのは見たことがあったが

癒しの魔法というのは、話には聞いていたがはじめて体験した。


第101話 後悔と同行

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