【第108話】

イシスの街


夜営をしていると、全身包帯の魔物に襲われた。

きっと、元は人間であったのだろう。

トールが浄化の魔法を唱えたおかげで

幸い怪我人は出なかった。




交代で見張りをし、無事朝を向かえることができた。

親方を先頭に俺達はイシスへ向けて再出発した。

今日も相変わらず、照りつける太陽が痛いくらいだ。


歩いている間は誰も口を聞かない。

無駄な体力を使うからだ。


昼には着くとゼネテスがいっていたからそんなに遠くはないはずだ。

できれば街で休みたいが、戦いが始まっていれば

すぐに加勢をしなければならない。


しばらく歩くと、また昨日のムカデが二匹襲ってきたが

今度は地面からの攻撃は特に注意をし、

親方が一体、残りの者でもう一体をしとめ今度は犠牲者も出なかった。


数時間歩き続け水筒の水を口に含んでいると、親方が声をあげた。


「イシスが見えたぞ」


皆、ほっとした表情を浮かべる。俺も同様だ。

だが、すぐに顔を引き締める。


「戦いのほうは?」


「・・・まだ距離が遠くて確信はできないが、

 今は魔物に襲われていないようじゃ」


もし魔物の軍団がイシスを襲っていたら

遠くから見てもなんらかの異変には気がつくだろう。


徐々にイシスの街が見えてきた。


「まだイシスは落ちてないようだな」


ゼネテスも安堵した表情だ。


しかしイシスの入り口は兵士が立っており、

人の出入りを厳重に管理していた。


親方から兵士達に話しかけた。


「ご苦労様です」


親方は普段俺達が聞いたことない敬語で兵士達に話しかけた。


「旅のものか。随分と大所帯だな。

 どのような事情でこのイシスに参られた?」


兵士が警戒して、親方に聞いた。


「我々は傭兵志望ですじゃ。

 今、イシスでは魔物との戦が行われて

 人手不足と聞いたものでして」


「そうか、それは助かるな。

 恥ずかしいことだが、実際、城の兵士が不足しており、今度魔物に攻め込まれたら

 このイシスは危ない。

 隣国のロマリアに救援を求めているところだがいつ着くかわからん。

 

 ちょっとここで待っていてくれ。

 今、城の兵士など雇用している担当者に聞いてみる」


「わかりました」


俺達は街の入り口で、待たされた。


十分程すると先ほどの見張りが戻ってきた。


「聞いてきたが、大丈夫なようだ。

 実際の報酬や雇用契約はあとで担当者に聞いてもらいたい。

 では、案内する」


俺達は兵士についていった。

イシスの街の大きなとおりを歩いて、城に向かう。


「綺麗な街だな」


俺は町並みを見て素直に綺麗だと思った。

砂漠にある街ということだったので、

物資や水も不足するだろうし、もっと質素で貧しい感じの街だと思った。

しかし、街のいたるところでは綺麗に整備され、緑も多かった。


「この近くにはオアシスがあるんだ。

 イシスはオアシスを中心に発展しているので

 おかげで水には困らない。

 他国との輸入なども大変なため、

 食料などもできるだけ自給自足しているんだ。

 だから砂漠とは思えないほど緑が多いだろう?」


兵士がこたえる。


「だが、今は街に厳戒体制がしかれている。

 そのため、あまり人は外にいないがな」


確かに。

街の規模にしては随分通りを歩いている人が少ないと思った。


そういえば、イシスの女王は大陸一美人といううわさだったな。

一度おめにかかりたいが、

傭兵志望できた俺達が会うのはのたぶん無理だろう。


「あそこが城だ」


第109話 ゼネテスの悪い癖

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