【第113話】

地獄のハサミ


魔物の群れと兵士達が激突する。

一隊目の兵士達は全滅し、二隊目の兵士と俺達で

協力して、どうにか百以上の魔物を全滅させることができた。

しかし新手が現れた。




徐々に魔物の姿がはっきりしてきた。

魔物達は全身が緑色のカニのような生物だった。


「軍隊ガニか?」


ゼネテスが目を細くし、敵を見極めようとする。


カサーブの水気が多いところに、軍隊カニという魔物がたまに出現する。

以前リュックと旅をしていたときにも遭遇したが

群れでたまにみかけるので、軍隊ガニと呼ばれていた。

しかし群れといっても、二匹か三匹で多くても五匹以上で現れることはなかった。


目の前には二十近い軍隊ガニだ。


「なんで、砂漠でカニなんだよ・・・干からびないのか?」


俺も野次る。

そしてカニの後ろに、頭から全身緑色のフードを被った人間がいた。


「何で人間が魔物と一緒に?」


カニは兵士達の前に来ると止まった。

特に襲ってくる様子はなかった。


兵士達も戸惑っているようだった。


魔物の後ろにいる人間が手をあげて、声をあげた。


”突撃!”


フード人間の声と共に魔物が一斉に兵士達に襲いかかってきた。


「あいつが魔物を操っているんじゃ!」


親方が叫ぶ。


「そういうことか!」


今までばらばらだった魔物が群れを組んで街に襲ってきたのは

魔王の手下が操っていたからだ。

イシスへの戦はすべて奴が仕組んだことなのかもしれない。


俺は目の前のカニに剣を振るった。

しかし剣は堅い殻にはね返された。


「堅ぇ!」


魔物が俺の隙をついて、大きなハサミでつかもうとしたが

かろうじて交わす。


あんなハサミにつかまれたら、胴体が上と下が

簡単に切り離されているだろう。


ゼネテスのような大剣なら別だろうが

俺のような剣ではまったく傷をつけることができなかった。

俺は念のため持ってきた小型の斧に武器を持ち変えて

カニの攻撃をなんとかかわしつつ、攻撃を加えた。


斧は甲羅を貫き、殻と同じ緑色の体液が飛び出てきた。

だが致命傷ではない。


小型の斧なので、相当接近しないと攻撃を加えられず、

与えられる傷も小さい。

また敵の一撃を交わすだけで相当な神経をすり減らさなければならなかった。

しかし撤退をするわけにはいかない。

撤退すれば、街に攻め込まれ、戦う術を持たない住民が餌食になるだろう。

俺は慎重に魔物の攻撃をかいくぐり、何度も攻撃を加えた。


兵士達も剣で傷つけられないものは槍に持ちかえ、

堅い魔物に無数の傷を作った。


”えぇい、馬鹿どもめ!

 何をもたついている!

 お前達に魔力を与えただろう!

 人間達を早く血祭りにあげろ!”


フード男の怒鳴り声を聞いたのか、カニはブクブク口を動かした。

すると、カニ達が次々と光だした。


「なんなんだ!」


兵士達も慌てふためく。


「動揺するな!

 敵が止まっている今、攻撃じゃ!」

 

親方の声で、兵士達も落ちつきを取り戻し、攻撃を再開した。


しかし、カニの甲羅はことごとく、槍をはじきかえし、

手傷を追わせることができなかった。

俺も斧も同様だ。


「スクルトの魔法じゃ!

 守備力をあげる魔法を使われたようじゃ!」


さすがの親方も動揺をしていた。


”お前達は無敵だ。さぁ、人間どもを殺せ!!”


第114話 ベギラゴン

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