【第119話】
人食い箱
ピラミッドに入るとさっそく罠が俺達を出迎えた。
二人を先行させ、先に進むというものだった。
しかし先にいった二人がなかなか戻ってこない。そして小さい悲鳴を聞いた気がした。
「親方、どうしますかい?」
ゼネテスが親方の指示を仰ぐ。
「見捨てるわけにはいかんだろう。
それと罠があった場合、どのような罠があるかどうかだけは見極めた方がよいな」
「では、俺がいきますぜ」
ゼネテスが一人で行こうとした。
「俺もいく」
ゼネテスなら心配ないとは思うが、万が一、一人で対処できない罠があったときのため俺も着いて行くと提案した。親方は無言で肯く。
ゼネテスは何も言わず、十字路を左に進んだので、俺も後に着いていった。
ゼネテスが、落とし穴を警戒しながら、通路を進むと、やがて一つの部屋に出た。部屋に入った瞬間、血の臭いがした。
「どこから臭うんだ?」
俺は上に魔物がいるのかと警戒して上を見たが天井が見えるだけだった。
「行き止まりだな・・・」
ゼネテスが部屋を見渡す。部屋には仕切りありり、それぞれの仕切りに隠れて宝箱があった。三つの宝箱があるようだ。
俺が一つの宝箱に近づこうとすると
「バカヤロウ、むやみに近づくな!」
ゼネテスに怒鳴られた。
「んだよ?」
大声で怒鳴られたので、少しムカっときた。
「こっちの宝箱を見ろ。血痕がある」
俺が近づこうとした宝箱は何もなかったが、ゼネテスが調べようとした宝箱の近くはおびただしい血の跡があった。部屋に入ったときの異臭はこれか。
誰が見ても、この出血の量は助からないと思うほどのものでしかも、血は新しく、今仲間が殺されたことがありありとわかった。
「この場で殺された?」
「あぁ、たぶんな。
宝箱に罠が仕込まれていたんだろう。
死体が見当たらないのが気になるが・・・」
「死体がないということは、どこか他の部屋に連れていかれたか、
もしくはこの場で魔物に食われたか・・・」
「どちらにしろ、この部屋には長居しない方がいい」
俺達は宝箱には手をつけず、来た道を戻っていった。
宝箱がかすかに開き、不気味な目と牙が現れる。その箱の中にかつて仲間だったものがバラバラに肉塊化されていたが俺達は気がつかなかった。
「そうか、二人とも殺されていたか・・・」
親方が落胆している。
「死体を見たわけじゃねぇが、血の跡から見て
あの部屋で殺されたんだと思うぜ」
俺は親方に報告をした。
「たぶん、宝を調べようとしたんじゃないのかな。
ただ気になったのは宝箱が閉まっていたんだよ。
箱の罠では吹き矢や有毒なガスがでるくらいのものはあるが
それなら、宝が開いた形跡があるはずだしな」
ゼネテスが付け加える。
「考えたくはないが、宝箱を偽装した魔物ということも考えられるの」
「宝箱の形をした魔物ってことか?」
「そんな魔物は見たことがないが、地獄のハサミ同様
あらたな魔物が生み出されている可能性もある」
「たしかに・・・宝箱に大量の血痕がついていたのも、
箱が閉まっていたのもそれなら納得いくな」
「とりあえず、今回の目的はエビルマージを倒すことじゃ。
基本、宝箱は見つけても近づいてはならん」
皆も神妙にうなづく。入って早々、犠牲者が二人も出た。これからどんな罠があるのか想像もつかない。
第120話 最低限の探索
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