【第124話】
イシスを選んだ理由
四階に上がった俺達を出迎えたのは大量の宝箱と
石でできた棺だった。
思わず宝に目がいってしまったが
一度聞いたら忘れない異質の声が聞こえてきた。
「エビルマージか」
親方が低い声で確認するように聞いた。
”ようこそ、我が城に”
余裕を持った声でエビルマージが答える。
天井から現れ、ふわっと床に立った。
”思ったよりも犠牲者は出なかったな。
ここに昇るまでにも半分くらいは脱落するかと思ったが
優秀だ、おまえたちは”
「俺達は盗賊一味だ。
罠の扱いは慣れているんだよ」
ゼネテスが挑発するように言った。
「この場に我々をおびき寄せたということは
このピラミッドで、おまえは魔物を作っているのか?」
親方がエビルマージに確認をした。
”ここは大量の遺体が埋葬されている。
素材はいくらでもある。
そして、魔物を呼び集める王家の宝もこのピラミッドには眠っている。
魔物を生み出すにはこの場所は最適なのだよ”
「だからピラミッドを拠点として、まずはイシスに攻め込んだということか」
” そうだ。
イシスを掌握したら、ロマリア、ポルトガ、順々に攻め落とす。
既にジパング、サマオンサは別の手段で我らバラモス様のもの”
「なんだと!?」
皆が驚く。
落ちたのはテドンだけかと思ったが、
ジパングやサマオンサにまで手がいっているとは。
俺達が把握している情報よりも早くバラモスの侵攻は進んでいるようだ。
特に親方の動揺は大きかった。
母国サマオンサが既にバラモスの手にあるとは思いもよらなかったのだろう。
「貴様・・・」
親方が見たこともない怖い顔をしている。
「親方、冷静になれ。
いつも俺に言ってくれているじゃないか」
エビルマージがここまでベラベラ話してくれるということは
俺達を皆殺しにするってことだ。
親方があつくなっては、俺達は総崩れする。
はっとした顔になり、親方は普段の表情に戻った。
「礼を言うぞ、ルーニ」
親方は雷神の剣をかまえる。
「逆に言えば、おまえを倒せば、イシス、ロマリア、ポルトガを守れるということじゃ」
”早速、はじめるか。
では私が作った新しい魔物の実験となってもらおう。
マミー、いでよ”
エビルマージがそう言うと、石の棺がガラガラと音をたてて動き出した。
そして、イシスで戦った包帯でぐるぐる巻いた魔物が棺の中から現れた。
”イシスで戦ったミイラ男とは一味違うぞ”
確かに包帯の色は紫になっている。より闇の力が強いということか。
第125話 マミー戦
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