【第127話】
隼の剣
親方が放ったベギラゴンをエビルマージは同じく極大魔法で相殺した。
雷神の剣があればどんな敵でも倒せると思っていた。
しかし魔力を使わない分、親方にまだ分があるはずだ。極大魔法の激突が何度も起こり、一瞬の隙を見てエビルマージは親方の後ろに瞬間移動した。
しかし親方は現れた瞬間、隠し持っていた剣でエビルマージを切り刻んだ。
”ギャアアア!!!!”
エビルマージの絶叫が響き渡り、床に黒い血が飛び散る。一瞬で絶命したに違いない。
「やった!!!」
俺は思わず声をあげた。
「残りの魔物を掃討せよ!」
親方はすぐに俺達に指示を出した。
エビルマージの制御を失ったのかマミーは動きを止めている。
俺達は親方の声に反応し、次々と魔物に攻撃をする。マミーが我を取り戻したときは既に四分の三を倒している状態だった。
親方も戦いに参加し、魔物を全滅させた。
「なんとか、やったな・・・」
ゼネテスが荒い息をつく。
「あぁ・・・」
俺はゼネテスに答えた。
「しかしエビルマージが後ろをとったときは、さすがにヒヤっとしたぜ。
まさか、マントの中に剣を隠し持っていたとはな」
「はぁ・・・はぁ・・・いつも言っているであろう、
切り札は最後までとっておけと・・・」
親方は息を整えながら、言う。
後ろにいたエビルマージに瞬時に攻撃できたのは瞬間移動を読んでいたのか、それとも本能的に体が勝手に動いたのか。
どちらにしろ、親方は未だに底が見えない強さだ。あれほどの魔物を一人で倒してしまったのだから。
確かに親方なら、一人でイシスにいったとしても地獄のハサミなど、すべての戦いを退けエビルマージも葬っていたかもしれない。俺達がイシスやピラミッドに同行したのは無駄な心配だったのでは、と思わせるほどだ。
「これは隼の剣という。
雷神の剣のような魔力は持っておらぬが、この細さからは信じられないほど強度があり
まず普通のことでは折れはせん。
軽量化されているから、このようなとっさの攻撃も可能なのじゃよ」
親方は普段はナイフやショートソードを使うのに長けているが騎士団出身だけあって剣の腕も達人と呼べる。
いくら軽量化され、切れ味が抜群の剣を持っていても腕が伴っていなければ先ほどのような攻撃はできないであろう。
「とりあえず、当面の危機は回避できたの。
イシスに戻り報告じゃ。
その前に死者を弔わなければいけないが」
この戦いで半数の仲間を失った。シャンパーニを出たときは二十人以上いたが親方、ゼネテス、トール、俺を含めて七人しか残っていない。
目の前にたくさんの宝があるが罠もあるだろうし、今は回収できる気力がなかった。仮にあってもイシスに戻ったら目立つだろうし体勢を整え、もう一度ピラミッドに戻ることになるだろう。
トールが首を失った死体などを集めて黙祷をささげる。俺達もそれにならう。
簡単な黙祷が終わった。
「では、戻るかの・・・」
親方を先頭広間を出ようとしたときだ。
”ククク・・・このエビルマージ様をあっさりと退けるとは”
死体が・・・話した?
第128話 死者の霊
前ページ:第126話 「エビルマージ戦」に戻ります
目次に戻ります
ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります