【第23話】

ロマリアからの追手


一人の老人が俺たちの前に現れた。

その老人は目にも留まらぬ速さで

俺の首筋にナイフを突きつけた。




「ワシの役目は、お主が持っている金の冠を奪おうと

 影でお主達を雇っている巨大組織の全貌を暴くことじゃ。

 お主達の会話でカサーブ東に来ていることがわかった」


「金の冠を盗むことを追っていたということは

 あんたロマリアのものか?」


「まぁ、そういうことじゃな」


「もしかして・・・・・・・・・

 あんたら、俺たちが盗むのを知っていて

 それで泳がせていたのか?」


「そうじゃ。王のご名案でな。

 警備も薄くて盗みやすかったじゃろうて」


「ちくしょう・・・・・

 見張りが少ねぇし、道理で変だと思ったんだよ」


俺はナイフを突きつけられながら、不満を言った。


「もしかして、あんた、俺のことをロマリアに来たときからつけていたのか?」


「そうじゃ。既に国宝の金の冠を盗む情報は我が国に来ていたからの。

 国家規模の情報はお主らが想像しているものよりはるかに巨大じゃ。

 盗賊が闇で仕入れている情報さえ、国家にとっては一部の情報に過ぎぬ。

 よく覚えておきなされ」


俺は国という存在をナメていた。

確かに表向きは国があり、城があり、王がいて、兵隊がいる。


しかし国というものは、秩序を守るため作られた塊であり、

その詳細は雇い主の王か、雇われ主の兵隊がいて、所詮烏合の衆、

王の命令をただ聴くことしかできない兵隊がいる程度のことしか思っていなかった。


だが奴らには奴ら独自の情報網があり、裏の盗賊から仕入れる情報が

情報の一部に過ぎないほど巨大なものとは思いもしなかった。

俺の無知から始まった失態なのかもしれない。


「お主は、今の雇い主の仕事は今回で何回目じゃ」


「初めてだ。

 気前がいい雇い主だったからやったのよ」


俺は正直に答えた。


「そうか、じゃぁ、お主はそれ以上のことは知らないのか?」


「あぁ、知らない」


本当のことだった。

確かに雇い主の大商人には一度会ったが

もらえるものさえもらえれば良いので、

詮索もしなかったしするつもりもなかった。


「そうか。ではお前達にこれ以上聞いても無駄じゃな。

 しかし物を盗んだ罪人には変わりない」


そう言って老人は俺とリュックに後ろで手足を縛った。


「あと、数分もすれば、ロマリアの騎士団が来る。

 それまで、おとなしく待っておれ」


そういうと老人は立ち去った。


第24話 縄抜け

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