【第28話】

運命の出会い


俺達を捕まえた老人は条件付で釈放してくれないかと

王に提案をしたらしい。

その条件が何かということは気になるが、

お咎めなしで釈放されるのなら、それは興味がある。

俺は老人の声を待った。




「お主達、ロマリアの兵隊にならんか?」


「はぁ!?」「はぁ!?」


俺とリュックはあまりのことで素っ頓狂な声をあげた。

盗人を兵隊で雇うなんて今まで一度も聞いたことがない。


「じいさん・・・どういうつもりだ?」


俺は老人の真意を確かめようとした。


「どうしたも、こうしたも、さっき言ったとおりじゃ。

  若いが腕は見通しがある。

  お主達のような若造を見ているとほっておけないのじゃ。

  まぁ、年寄りの世話好きとでも思ってくれ」


じいさんは笑った。


「もっとも最初は兵隊見習いじゃ。

  いずれワシの下についてもらうがな」


・・・・・わからない。

俺にはわからない。

何故だ?


俺やリュックのように盗人として捕まった人間を

兵隊として迎え入れようという考えがわからない。

このじいさんにいったい何の得があるんだ?


ただの世話好き?

そんなことは信じられねぇ。


いったい・・・・何をたくらんでいる?


「どうじゃ?」


「・・・・・・・・・」


俺は黙っていた。

老人を見た。

老人も俺を見た。

老人の目は鋭かった。

しかし、そこには真剣さがあった。


本当に・・・・・このじいさんは、

罪人の俺達を救おうとしているのか?


一方、その言葉を聴いてリュックの方は目を輝かせた。


「もしかして、ロマリアの戦士ということは王宮の魔法使いとかにでも

  なれる可能性があるってことですか?」


「そうじゃな。

  おぬしは魔法使いじゃからな。

  実際にそなたの魔法を使ったところを見てないから

  実力のほどは定かではないが、

  その若さにして、なかなかの素質があるとワシは思っている」


「そうか・・・・

  ねぇ、ルーニ、この話、すごくいいじゃない」


・・・確かに、すごくいい話だ。

しかしやはり15のガキである俺には、

その数倍も生きているであろう、老人の真意は読めなかった。

だから、俺は返事をするのをためらった。


だが子供の頃から、リュックの夢は宮廷魔術師になることだった。

その可能性が転がってきたんだ。


本来であれば、俺とリュックは罪人として裁かれるはずだった。

俺のせいだ。

しかしそれがチャラになり、もしリュックがここで夢をつかめるチャンスがあるのであれば・・・


「・・・・わかった。ここで働かせてくれ」


少なからず親友への罪滅ぼしにはなるかもしれない。

俺はこの話を引き受けることにした。


「じゃぁ、じいさんはいずれ俺達の隊長になるんだってことだな。

  わかったよ。

  名前は・・・・・じいさん、なんていうんだ?」


「ワシか?

  ワシはカンダタって言うんじゃ」




勇者チェルトとの出会いは将来、俺の運命を変えることになったが

このじいさんとの出会いも後に俺の人生を大きく変えることになる。


俺がカンダタと名乗るようになったのも

このじいさんがいたからだ。




第2部、執筆終了です。

元祖カンダタの登場です。


ルーニは、後に老人の名前をとって将来カンダタと名乗るのですが

その老人とルーニとの最初の出会いのシーンを書いてみました。


孤児院から脱出したルーニとリュックのその後のストーリーで

15歳に成長した、ルーニ(後のDQ3で出てくるカンダタ)とリュックです。


リュックは独学で魔法を見につけ、たくましく成長しています。

実際にバンパイアとの戦闘シーンとかも織り交ぜてみました。


一方、ルーニも持ち前の度胸の良さとハングリー精神で

仕事をしてお金を稼ぎ、二人は徐々に有名になっていきます。


そこで転がってきた金の冠の強奪事件、

そのあとロマリア国とのかかわり

そして将来を大きく変えるであろう、老人カンダタとの出会いを

第10話~第28話で書いてみました。


楽しんでいただけたでしょうか。


次回からは第3部に入り、ルーニとリュックが老人カンダタの元で過ごし、

後に大きな事件に巻き込まれていきます。


第29話 皆さんからの感想

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