【第37話】
瞳
リュックとの決勝戦が終わり、辺りは歓声に包まれた。
これから剣の授与式だ。王に剣をもらい、王宮に配属される。そこで俺は王にあの老人カンダタのことを聞きたい。
剣の授与式は一人一人名前を呼ばれて王の前に出て剣を授かる。最初に優勝者の俺の名前が呼ばれ、俺は王の前に膝をついた。
王の顔は遠目では何度か見たことがあるが、こんなに間近で見るのは初めてだ。
「そなたが、ルーニじゃな」
「・・・・・はい」
俺は王の目をしっかりと見た。王は優しそうな顔で、誰からも親しまれそうなそんな顔をしていた。人の良さが伺える。
「そなたに王宮の騎士の役目を今後つとめてもらうことになるが
ロマリアのため、よろしく頼むぞ」
「王・・・・・その前に一つお聞きしたいことがあります」
敬語など使い慣れないが、ようやく巡った機会だ。不意にするわけにはいかない。俺は慣れない敬語で王に話した。
「なんじゃ?」
本来は兵士は言われた通り剣の授与をうければいいのだが、俺が質問をしたことで、少し回りが慌てふためいた。
「おい、ルーニ、この場で質問とは無礼だぞ」
そんな回りの兵士達の声が聞こえたが俺は無視をした。
「王は俺が何故ロマリアで働くことになったかその経緯をお覚えでしょうか」
王は少し不思議そうな顔をした。
王が俺と会うのは初めてだが、俺が金の冠を以前盗みだそうとして捕まりその後、ロマリアで働くことになったことを知っているはずだ。しかし三年前の出来事で、たかが兵士見習の一人である俺のことを王が覚えているかというのはあやしかったが。
王は少し考え込むようにして、俺が何をいっているのかを理解しようとした。その後、何か思い当たるものがあったのか俺を見た。
「うむ、覚えておるぞ」
「俺は・・・・・・この城である老人の進言によって
王にこの城で働くということを聞きました。
そしてその老人の元で俺は兵士となるということも聞きました。
その老人の名は・・・」
その後の言葉を伝えようとしたが、王が俺の言葉をさえぎった。
「うむ、そなたの言いたいことはわかった。
しかしその話しは後にするぞい。
今は剣の授与をうけるのじゃ」
そして俺のことを見た。
ッ!!!
その瞳を見た瞬間、俺は心を刺しぬかれた気がした。温厚な顔は変わらなかったが、その目は今までの王とはまったく違った。温かみの顔に隠れて、有無を言わせない迫力。魔物など数々倒し、死と隣り合わせに生きてきた俺でさえ気圧された。
これが・・・・・王なのか。
第38話 王の間
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