【第43話】

情報売


老人カンダタとの再会。

老人はロマリアの人間ではないらしい。


そして俺たちが以前ロマリアで金の冠を

盗むよう指示をした雇い主は、裏で何かをやっていたようだ。

もっとも国宝を盗むのを思いつくようなヤツだから

そのことはわかってはいたが。




「聞いたら帰れないとはどういうことだ?

 聞いたら俺たちも何かの事件にかかわるということか?」


「それもあるが、聞いた以上ワシらの言うとおりにしてもらうことじゃ。

 それに従わなかった場合は、口封じもあるということだな」


言うことを聞かなかったら命の保証はしないということだ。


この三年で老人との実力がどの程度狭まったのか、

それとも開いたのかわからないが、老人の目を見れば

それが冗談でないことはわかる。


老人との実力差を知るために戦いたいとい気持ちもあったが

その前に疑問に思ったことはすべて聞きたかった。

それからでも遅くないはずだ。


俺は少し考えた後、リュックに話した。


「俺は聞きたいと思ってる。

 せっかくここまで来たんだしな。

 このじいさんに従うかどうかは別だが。

 だが、リュックおまえまで付き合わせるつもりはねぇ。

 おまえはこのまま城に戻ったほうがいいだろ?

 宮廷魔術師になるのだったら、これ以上余計なことに関わらないほうがいい」


リュックは即答した。


「そんなこと、ボクがすると思う?

 それにこのまま別れて納得するわけないじゃない」


俺はリュックがそういうことを言うのはわかっていたが

想像通りの声が帰ってきてため息をついた。

しかし心を決めて俺はリュックと話しを聞くことにした。


「いいよ、続きを聞かせてくれ」


「まずワシらがどういう集団でどういう仕事をしているかの

 説明をせねばならんかの。

 ワシらの仕事は裕福なものからものを頂き、

 それを貧しいものに還元してやることじゃ。

 そしてその一部分はワシらの財産として頂くということじやな」

 

「・・・・・・つまり早い話し、盗賊団ってことか?」


「まぁ、言葉を悪く言えばそうじゃな」


「なんでぇ、じゃぁ、俺たちが以前やっていた仕事とほとんど変わらないじゃねぇか」


俺はこの老人に落胆をした。

あれだけの強さを持った者だから

てっきり騎士団の隊長か、もしくは他国の英雄かとも思ったら

ただの盗人じゃないか。


「まぁ、それは仕事の一部だがな。

 だがもっと大事な仕事もしておる。

 それは情報を売ることじゃ」


「情報を売る?

 そんなものも金になるのか?」


「この世で不要なものなぞ、一切ない。

 例えば、ある若者が女に恋をしているとする。

 男はその女のことを知りたいであろう。

 その女の情報は他人からみれば不要なものかもしれんが

 恋をしている男から見れば金になるということだ。

 まぁ、そんなことをしたことがないがな。

 ただどんな情報も利用次第で金になるということじゃ。

 それが国家規模になれば、どうなる?」


「確かに・・・・・・」


「つまり、あなたはロマリア王に世界の情報を売っているということですか?」


「モノわかりがよいの。そんなところじゃ」


「でも、ロマリアの国家と盗賊団が手を組んでいるということを知ったら

 国民は反発するんじゃないですか?

 誰だって、自分が税金を払っている国が盗賊団と手を組んでいることを知ったら

 国民は不安がるし、そもそも国が盗賊団の存在を認めてしまうということなのですか?」


「そこなのじゃよ。

 ロマリア王の賢いところは。

 誰とて国が盗賊団と手を結んでいるところを知ったらイヤがるじゃろう。

 しかし盗賊団の情報は馬鹿にはできない。世界の情報を把握してるからの。

 ロマリア王もその情報は欲しい。

 そのため情報を売る変わりにワシらはロマリア国では一切盗みをしないということを約束した。

 ロマリア王との契約は国内での盗みをしないこと、盗賊団と国の関係は一切内密のこと、

 そしてロマリア城が手に入る情報もワシらに提供するということ。

 その変わり世界の情報をロマリア国へ売ること。

 ワシらからの提案はその変わり他国への行いについては一切干渉しないということ、

 それと契約金じゃ。国が相手となると額も違うからの」


「なんとなく、あんたとロマリアの関わりはわかった。

 だからロマリア王はここに来るまで 何も口外するなと言ったのか。

 それにしてもロマリア王えげつねぇな。

 自国の盗みはダメで他国はOKということは

 自国のことしか考えてねぇじゃん。

 賢いというより、ずる賢いんじゃねぇのか・・・・」


「ホホホ、素直なことを言う子じゃ。

 確かに国はズルイ。

 しかし国など所詮そんなものじゃ。

 まずは自国の繁栄を考え、その後世界のことを視野に入れる

 それが国ってものじゃて」


そういってじいさんは高らかに笑った。


第44話 2つの選択

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