【第44話】

2つの選択


明かされる老人カンダタの正体。

それは一国の騎士とかではなく盗賊団の首領らしかった。

しかし盗賊の仕事をだけしているわけではなく、

情報を売るということでロマリア国と関わりを持っていたようだ。




「しかし国相手に商売しているのに、

 何で盗賊団なんかやってるんだ?

 だったら最初からそっちの仕事だけをすればいいじゃねぇか」


「いくら国が相手だからといって、それだけでは食べてはいけないんじゃよ。

 お主がこのシャンパーニの塔に入るときに何人もの部下を見たじゃろう。

 実際には世界各地に情報を集めるために相当の数がおる。

 みんなを食わしていかなきゃ、いかんし

 一人では国相手に情報を売ることはできんから、それだけ人手もかかるわけじゃ」


「ふ~ん・・・・・」


俺は少し釈然といかなかったが続いて質問をすることにした。


「俺たちをロマリアの見習い兵にさせたのはいったいなんのためだ?」


「最終的にはお主達をワシの部下に招きいれたいと思ったからじゃ。

 まず、その前に社会の規律というものを覚えてもらうタメに

 王に頼んで、ロマリアで三年修行させることにした。

 上の者の言葉を聞くという意識を持たせるタメじゃ。


 お主は今まで二人だけで仕事をしておったのであろう。

 それぞれの技術が高くても、仕事とは一人や二人ではできないものもある。

 それには人との関わりあい、接し方などを覚えてもらうために

 規律に厳しい兵士見習いはうってつけだったわけじゃ」


確かに。

リュックはともかく以前の俺だったらこの老人の姿を見た瞬間

以前捕まえられた復讐するために真っ先に戦いを挑んでいたかもしれない。

少なくともロマリアでたくさんの人と関わり、人との接し方は覚えたのかもしれないが。


「同時にロマリアで正式な剣術や武術を学ぶことで

 それも経験になると思ったからじゃ。

 強い部下はいくらいても困らん」


「おいおい、じいさん俺たちはまだあんたの部下になるとは言ってないぜ」


「さっきも言ったはずじゃ。

 ”従ってもらう”とな」


老人はギラリと俺達をにらんだ。

年からは想像できない有無を言わせない迫力がある。


「だが、ワシも鬼ではない。

 ロマリア王の手紙にはワシへの紹介状以外に他にも記述してあった。

 ”当初の約束では三年後に返すということであったが

  二人は今回行われた闘技大会でも優勝・準優勝をした強者であり

  ぜひロマリアとしても欲しい人物だ。

  だから本人達にロマリアに戻るかどうかを選択させてやってほしいと”な。

 現在のお主達二人の実力は知らないが、ワシもお主達を招きいれたいとは思ってる。

 だが最終的な決定はお主達に任せるわい。

 ただし、ロマリアに戻ったときは今日話したことは忘れてもらうことじゃ。

 口外した場合は命がないと思ってもらおう」


「・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・」


「・・・・どうする?」


俺とリュックはしばらく無言になった。

2つの選択しかないということだ。

ロマリアに戻り、最終的にはロマリアの兵を辞めて自由になるという方法もなくなはかった。

しかし俺にはこれからロマリアに戻って国を守るという仕事はしたくなかった。

それに、俺はこのじいさんと戦ってみたい。

その思いは強かった。

このじいさんに従うのもイヤだが、硬い規律に守られた王城に戻るよりは・・・・


「リュック、おまえは王城に戻れ。

 おまえは本来盗賊団に入るために生まれたわけじゃない。

 それにこのままロマリアに戻れば、宮廷魔術師の夢は

 より近いものになるんだぞ」


「それはそうだけれど・・・・・でもルーニは?」


「俺はここに残る」


「えぇ!?」


第45話 リュックの決断

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