【第49話】
戦いの技術
老人カンダタとの再戦。
待ち望んでいた戦いだった。しかし、老人が両手に持つ二本のナイフの連撃には耐えられず、俺は二度目の敗北を喫した。
「参った…」
改めてじいさんの強さを示された俺は素直に負けを認めた。剣を打ち合わせた時間はほんの一分たらず、しかし俺の体には激しい運動をしたように汗がべっとりとまとわりついた。一方、じいさんは息一つ乱していない。
じいさんの素早さもさることながら、気迫負けをした。打ち合わせるごとに体力がごっそり削られる気がした。
「もう一度やるか?」
「…頼む」
俺は再度、剣を構えて立ち向かった。本当なら勝負に二度目はない。一度俺が敗れているのだから、もう完全に負けは認めている。しかし俺はこの老人の技や力をもっと知りたい。だから俺は剣の稽古をしているかのように、勝ち負けは気にせず向かっていた。
俺は一撃目を老人に振り下ろした。老人は二本のショートソードで受け止めたと思いきやそれを受け流し、俺の体勢を崩しにかかる。
俺はすぐに剣を引き戻し、二撃目を放った。しかしこれも老人のショートソードに受け止められたかと思いきやまた受け流された。そして、体勢を崩された後、俺の横をとられた。気がついたら、老人のショートソードが俺の首に触れていた。
「参った…」
俺はまた降参をした。話にならない。まだこんなに差があるとは。
先ほど、じいさんと剣を打ち合わせるときに体力がごっそり取られるといったがそれだけではない。
戦いの技術が半端ではない。
最初に武器を隠し持っていたのは正々堂々とは言えなかったが相手の体勢を崩すまで連続の攻撃を加え、こちらの剣は力で受けとめるのではなく、受け流す。高度な技術である。こちらの太刀筋を予測できなければできない芸当だ。
「お主は力が強い。
なまじ力が強いだけに大振りになっておるところがある。
そして感情で剣を振りまわされば、次に何をするかが相手にわかり剣筋も読まれる。
それでは話しにならん。
戦いに力が必要なのは確かじゃ。
盾で防いでも押しつぶされては意味がないからの。
力で戦う相手ならそれでも良いかもしれんが、
戦いに最も必要なのは”予測”と”相手の急所に一撃を叩きこむ”
この2つじゃ。
敵の行動が予測があれば、次に攻撃をする場所も読めるし
相手の攻撃を回避できる防御にもなる。
また、いくら手傷を追わされても急所の一撃を決めれば
それで戦いは終わりじゃ」
第50話 なぐさめ
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