【第59話】
エルフの女王
エルフの隠里に着いた俺達はエルフ達に包囲された。
ゼネテスは余裕な表情である。ここに来た目的を伝え、判断をエルフにゆだねることにした。そして俺達は女王の間に通された。
女王の間といっても、人間の城のような仰々しい王家の間とは違い自然に作られた木々を組み合わせて作られたシンプルな部屋だ。そして目の前には、美しい女がいた。その美しさは人間が持つ女の美しさとは少し違い非の打ち所がない完璧な美しさでまるで彫像や絵画のような美しさだった。
「あなた方が、人間の村から派遣された冒険者達ですね」
俺達は黙って頷いた。
「事情は聞きました。
どのようにしてこの村に入り込んだのか知りませんが早々にここから出ていただくようお願いいたします」
と話す余地無しという感じで厳しい口調で言った。
「おいおい、こっちは苦労してここに来てあんたらの要望も聞こうと思ったのに
なんだ、その言い方は」
ゼネテスは怒気をはらんだ顔をした。
「この村には人間達が立ち入るべきではないのです。いかなる事情があるとはいえ」
女王は毅然とした口調で、その表情は先ほどと変わらない。
「ほぉ…こっちはかわいい娘さんが家出して母親や父親が心配していると思ったから
ここに立ち寄ったのにあんたらエルフには娘を心配と思うような心がないのか?」
ゼネテスが反論する。ゼネテスの言うことは最もだった。エルフが俺達人間と関わりたくないというのはわかるが事情を話して、娘を捜すと言っていることが信用できないことなのか。
人間そのものが信用できなく、エルフを生け捕りにして見せ物にするとでも思っているのだろうか。人間とエルフの価値観は違うかもしれないからわからないが、それで俺達に任せることができないということか。
「人間がこの隠里に立ち寄るようなことがあるから、このようなことが起こったのです。
であれば、アンが人間の男などに惹かれるようなこともなかったでしょう」
今の言葉を聞いて、俺はこの女王に説得しても無駄だと感じた。「人間の男”など”」と言っているのだから人間を軽蔑しているのが明らかにわかる口調だった。つまり、このエルフの女王も二人の仲を見つめる気はないし、人間のことを嫌っているのもわかったからだ。
「エルフの隠里は閉ざされた世界です。
外からの介入をすることもされることもないから
完璧で平和な世界を保っていられるのです。
しかし人間がこの村に訪れるようになってからそのようなことが起こったのです。
だからこの村から立ち去ってください」
エルフの女王はまったく引く様子もなく、相変わらず厳しい口調でとにかくここから出て行けと言う。
俺とゼネテスは顔を見合わせた。ゼネテスはため息をついた後、後ろを向いて女王の間を出ていく。俺も後を追った。
第60話 隠された事情
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