【第60話】
隠された事情
エルフの女王に通された俺達は具体的にエルフの娘についての
情報を得ようとしたが女王はまったく聞く耳を持たず俺達に出て行けと言った。
俺達は隠里をさっさと出ようとする。
「ったく、あの女は…よくあれで女王なんてやっているな。
まったく聞く耳を持たない頑固な女だ」
俺は心底うんざりした。
「上に立つ人間ならいろいろな考えを幅広く持ってそこから行動するべきだが
そもそも人間とエルフの価値観が違うようだな。
どうやら、エルフは完璧な平和を維持するために縛られた掟に従って
変化のない生活を送るものだと思っているのだろう」
ゼネテスは感情的な俺とは違って、客観的に分析しているようだった。感情で行動をしているような奴だと思っていたから下手したらあの女王の間で乱闘でも起こすかと思ったが冷静さを持って考えていたようだ。
親方がゼネテスと一緒に俺を行動させたのが少しわかった気がした。
「これからどうする?」
そうゼネテスに話しかけたとき、後ろから足音と共に声が聞こえてきた。
「待ってくれ!」
そう声をかけてきたのは、一番最初に俺達を囲んだときに話しかけたエルフの青年だった。
無言で振り返る俺達。
「あなた達に話がある…」
「何だ…俺達にはもうないぜ」
俺は少しすねた。我ながら大人げないと思うが
あれが部族を代表する態度なのであれば、やはりいい気はしないものだ。
「先ほどは女王様が無礼を働いたようで悪かった。
女王様も悪意を持って言っているわけではないんだ。
女王様が言った事実も確かにある。人間がこの隠里に入り込んだからこのようなことが起きたから
これ以上このようなことがないように、何人たりともこの隠里に入れないような掟が決められた。
しかし最も駆け落ちした娘を心配しているのは他ならぬ女王様なのだ。
その駆け落ちした娘とは女王様の実の娘でな」
ゼネテスの眉がぴくりと動く。
「娘の名前はアンと言う。
本音はアンを探しにいきたいのだろう。
しかし何より種族を守ることに女王にとっての義務、
女王は忠実にそのことを守られているだけなのだ。
だから、お願いだ。
もし、アンを連れ戻せるようであれば連れ戻して欲しい」
「…」
「女王様がお怒りな理由はもう1つある。
アンがエルフの宝物”夢見るルビー”を持ち出したのだ」
「夢見るルビー?」
第61話 夢見るルビーの秘密
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