【第68話】

親方の教え


口論になったアンとレルラ。

そこでレルラはアンを連れ戻した理由を言う。

アンは驚いたようだった。




誰も何も話さない。

アンはレルラにかける言葉を考え

レルラはそれを待つ。


「…ごめんなさい」


少しの間を置いてアンが話した。


「レルラ、あなたの気持ちは嬉しかった。

 でも、それならもっと早く言って欲しかった。

 今の私には好きな人が、もうできちゃったんだもの」


アンの答えを聞き、レルラはうなだれた。


「私はエルフの閉鎖的な世界があわなかったの。

 誰も私のことを理解してくれなかったわ。

 だから、私は一人で外の世界にでたの。

 その時に出会ったのが彼だった」


ノアニールの村長の息子のことだろう。


「彼は私が魔物に襲われているところを助けてくれ、手当てしてくれた。

 最初は人間が怖かったけれど、それは思いこみだったってことがわかったわ。

 そして彼は村から出た私の想いを理解してくれた。

 同族の誰もが理解してくれなかったのに、彼は私をわかってくれたの」


そこでアンは一息つく。


「だから…私は帰れない。お母様が私達のことを認めてくれるまでは」


レルラには悪いが、アンの想いはかわらないようだ。

まぁ、他人の恋路に興味はない。


俺達の目的はこの洞窟の探索と村長の息子を連れて帰ることだ。

その中にアンを連れて返るという話は含まれていない。


「込み入っている話の中悪いが…」


俺は話に割り込んだ。


「あんたの恋人は今どこにいる?」


アンは俺を見たが、何も答えなかった。


しまった、初対面のときに、

「村長の息子を連れて返るために来た」ことを言ってしまった。

当然、居場所を答えれば力づくで連れ戻す可能性を考えているに違いない。


”バカもんが。いつも言っておろう!

 情報は最後まで出さずに、切り札はとっておくと。

 オマエは何度言ったらわかるんじゃ”


親方の怒鳴り声と飽きれた顔が浮かんでくる。

親方がいつも俺に言っていることだ。


ゼネテスが俺をさっき非難する目で見たのも

このことを予想したからだろう。


アンは短く何かをつぶやく。

すると、突然アンの姿が消えた。


第69話 消えたアン

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