【第73話】
眠らされた村
レルラと別れた俺達はエルフの隠れ里には寄らず夜になってもノアニールへ強行した。
夜明け頃、ノアニールに到着する。しかし様子が変だ。見張りが倒れている。
俺達がノアニールの入り口につくと二人の見張りはなんと眠りこけていた。
「なんだ…死んでいるわけじゃないのか」
ゼネテスが少し安堵した表情をした。
「おい!
こんなところで眠るな!」
俺は見張りを叩き起こす。しかし一向に起きる気配がない。
「どういうことだ?」
ゼネテスがもう一人の見張りも起こそうとするが同じ結果だった。
「ダメだ…」
「おい、町の様子も変だぞ…」
いくら夜明けとはいえ、農家の朝は早い。このくらいの時間になれば、農家の人間は畑を耕している姿をみかける。家からは朝食をつくるために火を使っている家が何件もあるはずだ。しかしどの家からも煙が見えない。
俺達は町の中を調べることにした。
宿屋の主人、教会の神父、村長全員が何かにとりつかれたように眠り込んでいた。 町の中で起きている人間は誰もいないのだ。
このような現象、初めてだ。
「何かの病気か?」
「伝染病ということか?」
「あぁ…」
「しかし俺達は眠くならないぞ」
「潜伏期間があるのかもしれん…」
「確かに…」
そうなるとまずい。
俺達は直ぐにシャンパーニに戻ることにした。体は疲れきっているが、こんなところで俺達も眠らされたらシャレにならない。
もっとも、伝染病であれば、シャンパーニに菌をもちこむわけだし旅の途中に病気が発症してしまったら、のたれ死ぬことになるだろう。
シャンパーニの塔にたどりついたのはそれから二日後だった。カサーブの村も通りすぎ、ほぼ三日間徹夜で歩いていたため、俺達はボロボロだった。いつ俺達にも同じことが起こるかわからなかったからだ。だが、俺達は眠り病が発症することもなくシャンパーニに帰って来た。
俺達は眠気と疲れと戦いながら、親方にノアニールの村の出来事、アンの件、洞窟のマップについて手短に話した。
「なるほど…確かに奇怪じゃ…
あとでノアニールには別の者を派遣する。
それと同時にロマリア王にも報告をしておくことにしよう。
何かわかるかもしれん。
ご苦労じゃった。おまえ達は休め」
俺達は親方の部屋を出たら、すぐにベットで眠った。次に目覚めることができるのかという不安を抱えて。
しかしノアニールでの出来事が伝染病ではなく、レルラがエルフの女王に報告したことにより、女王が呪いをかけたということは当時の俺達は知るよしもなかった。
第四部終了です。今回はゲーム本編やチェルトの冒険にもあるノアニールの村の出来事について書いてみました。
アンが夢見るルビーを持ちだしたことによりさらにレルラの報告を聞いてノアニールに呪いをかけてしまいます。
しかしアンは自分勝手ですよね~(笑)いくら仲が認められないからといって、エルフの宝を持ちだしちゃうなんて。
夢見るルビーは、エルフの里を他の世界から守るものとして今回は書いてみました。
また老人カンダタは最初と最後にしか登場しませんでしたがゼネテスが、王族と関係があったこと、サマンオサ出身という話しを口にします。
これはDQ3のゲームで語られる「あるキャラクター」に少し関係するのですがその話は次の第五部で語ろうと思います。(まぁ、サマンオサのキャラクターといったら想像がつくでしょうが)
次の第五部はチェルト本編のちょっと前の時代で(チェルトは第六部で出現予定)第二部(青年編カンダタ)から謎に包まれている金の冠を盗むように依頼した「組織の謎」が解明され、カンダタ達の住む世界が大きく動くことになります。
そして、ルーニや老人カンダタ、ゼネテスなどの人生も大きく変わってきます。
第74話 自我崩壊
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