【第78話】 気遣い
どうやら、テドンの村は魔物に襲われているらしい。
そのため港の人間はテドンに救援にいったか、逃げ出していた。俺は仲間の一人をシャンパーニに返し、テドンに向かった。
親方からもらった地図によると、港から約1日程度のところにテドンの村があるようだ。しかし、この辺りは森林に追われているため迷いやすい。それでも港からテドンへの粗末な道が造られていたので迷うことはなかった。
「不気味だな…」
ラゴスが気味悪そうにつぶやく。
「気を抜くなよ。いつ魔物が襲ってきてもおかしくないからな」
皆が無言で頷く。
一般の盗賊は情報を集めるのが仕事であり、魔物などの戦いにはあまり向いていない。もちろん、武器を持てばそれなりに戦えるが、戦い慣れている戦士や武道家には歯が立たないし、魔物との戦いも慣れているはずがなる。俺達は疲れた体にむち打って、テドンへ向かう。
「またかよ…」
ラゴスが前方をみて、絶句する。魔女に襲われて、数分しか歩いていないのに突然ガシャガシャという金属音を鳴らせながら新たな人間が俺達の前に立ちはだかった。
灰色の鎧に身をつつみ、兜、小手、盾などの重厚な装備に巨大な槍を持っている。まるで戦争をしているときの騎士のような格好だ。テドンへ救援にいっている人間だろうか。
「おい、テドンの人間か?」
俺が声をかけると、その男は奇怪な声をあげて襲いかかってきた。人間があげられるような声じゃない。
「こいつも魔物か!」
ラゴスが悲鳴をあげる。
俺達の貧相な装備ではとても通用しそうにない。
「逃げるぞ、各自テドンへ向かえ」
俺は素早く散ると、テドン方向へ走りだした。灰色の騎士は分散した俺達のどれを追うべきか迷っていたようだがやがて仲間の一人に向かって走り出した。
生き延びてくれよ…俺は仲間の無事を祈りつつ走った。
と、突然俺の体は光に包まれ、全身に激痛が走った。
「グアァアアア!!!!!」
肌がやける匂い。全身の自由が奪われ、俺は地面に倒れた。遠くの方で声が聞こえる
”ケケケ…また人間をみつけたぞい”
先ほど倒した魔女と似たような声がする。ちっ…まだ他にも仲間がいたんだな…
”おぉ? こいつ、ベギラマをかけたのにまだ息がある。 こりゃ、良いサンプルになりそうね”
サンプルだと?俺をさっき言っていた実験材料に使うってことか?もしかして人体実験か?ということは、こいつ、例の”組織”のやつらか?ちくしょう…せっかくしっぽをつかんだと思ったのにこんなところでやられてしまうなんて。
もうこれ以上逃げられそうにない。
悔しさと同時に、俺はリュックの顔を思い浮かべた。死ぬ直線はいろいろな過去の想い出が浮かぶというが俺にとってはリュックとの暮らしが一番長かった。そして親方の顔。すまねぇ…こんなところで死ぬなんて…俺のそこで意識で途絶えた。
第79話 縄抜け
前ページ:第77話 「気遣い」に戻ります
目次に戻ります
ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります