【第82話】

ルーニの涙


親方が追っていた人身売買組織は

魔王復活の先兵として、人集めのため何年も前から計画されたことだった。

ラゴスは、魔女に得体の知れない液体を飲まされ、

魔物にされてしまった。




ラゴスはうめき声をあげて、俺に近づいてきた。

俺は後ずさりたかったが、足には未だに縄と鎖がついている。

手の縄はもうすぐ切れそうだが、俺は身動きがとれなかった。


「ラゴス!」


俺は必死にラゴスを呼びかける。

ラゴスはゆっくりと歩んでくる。


”無駄さ。コイツはもう自分が誰かもわからないし、過去の記憶もすべて失った。

 あるのは、破壊の衝動だけさ”


魔女は俺をあざ笑うかのように、楽しげに話した。


ラゴスはあと一歩のところまで近づいた。


「ラゴス?」


ラゴスはいきなり俺に思いっきり殴りかかってきた。


「グハッ!」


俺はラゴスの拳をまともにあび、床に叩き付けられる。

もう何度この石床に叩きつけられたかわからない。


「ラゴス…」


俺は苦痛に耐えながら、それでもラゴスに呼びかけた。


ラゴスは今度は俺に馬乗りになると、

首をしめてきた。


「アァ…ウゥ…」


く、苦しい…


「ラゴス…俺だ…ルーニだ…」


ラゴスは不気味なうめき声をするだけで

俺の首に当てられている力は一向にゆるまない。


「ラゴス…俺が…わからない…のか?」


俺はやっとのことで声を絞り出した。

ラゴスは俺の声にまったく反応しない。


「…ラゴス…」


俺の目からは涙がでてきた。

ラゴスは完全に魔物にされてしまった。

そして、俺は仲間だった人間に殺される。

今まで一緒に飯を食ってきた仲間が、

目の前で魔物にされて、俺は…殺される。


クソ、クソ、クソ!!!!!!

クソオオォ!!!!!!!!!!!!



「ウァァァァアアァアアアアアア!!!!!!!!」



俺の頭の中で何かが切れた。


第83話 皆殺し

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