【第89話】

帰還


暗殺用のナイフで、ウッソを殺した仮面男をどうにか倒した。

増援が来る前に、この場から逃げ出し、

シャンパーニに戻らなければ。




テドン近くの港にたどりつくまでに、多くの魔物が襲ってきた。

テドンの人間を、例の薬で魔物に変えたと思われる魔物達、

仮面をかぶった魔物や、ゾンビと遭遇したが、

俺は隠れてなんとかやり過ごした。


港についたときは日がでていた。

昼間になれば、若干魔物の脅威も減る。

夜行性の魔物も多くいるからだ。


港はあいかわらずほとんど人がいなかったが

魔物も入り込んではいなかったため

俺は着ていた服を一枚脱ぎ、

右手と口を使いながら、左肩に巻いていった。

腕を固定するためだ。


相変わらず激痛が走るが、ここまで左手を手当てする時間もなかった。

布を巻いたくらいでは手当てにもならないだろうが

固定していたほうが、骨折していた場合は早く骨がくっつく。

とりあえずの応急措置は今はこれしかできない。


俺は数少ない不定期便の船に乗りつぎ、

シャンパーニの塔に戻ろうとした。




シャンパーニの塔に戻るまで

ロマリア、カサーブ間なども魔物が増えていた。


敵の強さはテドンとは比べるほどでもなかったが

それでも俺は生きて帰ることを優先するため

夜間での旅はひかえ、片腕をかばいながら

昼間のみ行動をした。


昼間でてくる魔物はショートソードで

軽くきりつけ、相手の動きを鈍くして

あとは逃げることを繰り返した。


ロマリアでもカサーブでも宿泊し、

夜はできるだけ骨の直りがよくなるよう、ひたすら眠りつづけた。

そしてどうにかシャンパーニの塔に戻ってくることができた。


「やっと着いたぜ・・・」


死んだ仲間達の顔が浮かぶ。

できれば、みんなでここに戻ってきたかった。


第90話 緊急召集

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