【第90話】

緊急召集


テドンから痛む腕をかばいながら

俺はどうにかシャンパーニの塔に戻ってきた。

テドンほど脅威ではないにしろ、

以前より魔物の数は激増していた。




シャンパーニの塔には今までに見たことがないほど

人があふれかえっていた。


顔見知りの奴も多かったが、

見たことがない奴も結構いた。


「ルーニ、戻ったか」


そう声をかけてきたのはゼネテスだった。


「あぁ。

 それよりなんだ、この人の数は」


「親方が世界各地の仲間に緊急召集がかけたようだ」


「ふぅん、例の魔王と関係あるのか?」


「あぁ」


だが、ゼネテスはそれ以上話そうとしない。

事情は知っているが、話したくはないということか。


俺の視線を感じたのか。


「あとで、そのことについては親方から話がある。

 それより、その右腕はどうした?

 ラゴスやウッソは?」


ゼネテスは俺に聞く。

今度は俺が無言になる番だった。


ゼネテスはそれですべてを察したようだ。


「そうか・・・」


「テドンは想像以上だった・・・

 町にさえ、たどりつくこともできなかった・・・」


「例の組織については?」


「やはり魔王の配下がやらせていることだった。

 ウッソはその魔物にやられ、

 ラゴスは魔物化され、それを・・・俺が・・・」


「・・・」


ゼネテスもそれ以上は何も聞こうとはしなかった。

俺は沈黙にたえられなかった。


「・・・親方に報告をしてくる」




俺は親方の部屋に行き、今まであったことをすべて話した。


「・・・うむ・・・ご苦労だった。

 ウッソやラゴスのことは不運であった。

 死体はこの場にはないが、

 あとで墓でもたててやらねばなるまい」


「あぁ・・」


親方は誰にでも気を配り、

今まで働いてきた奴らにもしかりと忠義をつくす男だった。


「しかし、テドンがそこまでひどいとはな」


「この目でテドンの村を確かめたわけじゃねぇが

 たぶん村は全滅だろ」


「うむ・・・」


「そういえば、親方。

 ゼネテスから聞いたが、何でこの塔にこんなに人がいるんだ?

 世界から緊急召集をかけたって、ゼネテスから聞いたが」


「ルーニ」


親方はまっすぐ、俺の顔を見た。


「な、なんだ・・・・」


突然親方にまっすぐ見られ俺はとまどった。


「今、世界は動こうとしている」


「なんだ、藪から棒に・・・」


「魔王バラモスが現れ、それが現実だということがわかった。

 お主もテドンに行ってきてそれを実感したであろう」


「あぁ、それは・・・実感した」


ウッソやラゴスなど失った仲間達。


「だからワシは皆を集めた。

 今が動くときだと判断したからじゃ。


 ワシはずっと奴らをおっていた。

 お主には・・・すべてを話しておかなければいかんな。

 ワシが何故奴らを追っていたのか、

 そして、この組織を作ったのかということを」


「・・・聞かせてくれるのか?

 今までは教えてくれなかったじゃないか」


「今は状況が違う。

 そして、ワシはこの数年おまえにいろいろ教えてきた。

 まだまだ未熟なところもあるが、

 今のおまえなら、この組織を任せられる」


第91話 老人カンダタとサマンオサ

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