【第99話】 ゼネテスとの共感
親方から皆にイシス行きの話があった。
イシスで魔物軍団を倒しに行くこと、親方に何かあったときは、ゼネテスか俺を次期棟梁とすることなどが伝えられた。もっとも親方になんかあったときは、俺やゼネテスも生きているかどうかもわからないが。
明朝、ゼネテスは朝一番に塔の入り口にいて皆を待っていた。
「はやいな」
俺から珍しくゼネテスに声をかけた。
「おまえもな」
ゼネテスも返事を返してくる。
「結局あれから、20人くらい親方のところに同行の申し出があったそうだぜ」
「結構多いな」
昨日広間にいたうちの一割の人間が同行をすると言ったわけだ。
「俺達が次期棟梁になるのが、納得いかねぇってことか、 それともこれを機会にのし上がろうとするのか。 次期棟梁になるということは、”カンダタ”を継ぐということだからな」
”カンダタ”の意味が持つ力は、裏の世界で力を持つという意味だ。
「俺は棟梁に興味はないんだがな」
「俺もだ」
ゼネテスもうなづく。こいつも俺も地位や名誉に興味はない。
「なぁ、親方の過去のことは聞いたか? 騎士団の団長であったことや、エジンベアの話とか知っているか?」
俺はゼネテスに聞いてみた。
「あぁ、聞いた。 親方がこの組織を作った理由もな。 まぁ、うすうす感じてはいたが」
「どう思った?」
「どう思ったって?そうだな・・・。 親方のやっているところは立派だと思う。 しかも口だけでなく、有言実行をしているわけだからな。 それに共感できてるところもあった」
俺と同じだ。生まれや育ち、親がいなかったこと、貧しい時代を生きてきたことなど。ゼネテスも共感があったのだろう。
「うまくは言えねぇが、 あの人はこれからの時代にも必要な人だ。 だから俺も今回一緒に行くって言ったのかもな」
「なるほどな・・・」
「そういうおまえは、どうなんだ」
「俺・・・も似たようなもんだ」
俺はゼネテスのように、これからの時代に必要という考えで同行したわけではなかった。親方に父親のようなこものを感じているかから死なせたくない、だから同行するわけだが、そんなことは恥ずかしかったので言わなかった。
そんな話をしていると、残りの仲間がぞろぞろと出てきた。顔なじみの奴らは俺達に話しかけたりもしてきたが中には敵意剥き出しで厳しい視線を向けてくるものもいた。
第100話 盗賊あがりの神父
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