【第142話】

新たなる旅立ち


朝が来た・・・・・・

結局、一睡もできなかった・・・・・・

もう・・・・・・・行かなきゃ・・・・・・・


「母さん、それじゃ、行って来るね」

 

「忘れ物は・・・・・ない?」

 

「うん」

 

心配そうにお母さんが見ている。

それを振り切るように

 

「じゃぁ・・・・・・・・・行くね」

 

「チェルト・・・・・・・」

 

「ん?」

 

「ちゃんと帰ってくるよね・・・・・・・・」

 

「な、なによぉ~

 まるで、もう会えない言い方なんか、しちゃってぇ~

 当たり前でしょ!

 これから、元気に旅立とうって時に、そんな泣きそうな顔しないでよぉ~」

 

私だって、大魔王ゾーマを倒したあと、ちゃんと戻ってくるつもりだ。

絶対に戻ってくる。

絶対に戻ってきてやる!

 

これが永遠の別れって訳じゃない。

自分にそう言い聞かせ、勇気を奮い立たせる。

 

「大丈夫!

 いつ帰れるか、わからないけれどさ、今度帰るときは、ミリーや

 前の、手紙の子のムーンとか連れてかえるからさ」

 

「きっとだよ・・・・・・・・・・」

 

「うん!」

 

 

しかし、もう、お母さんに会うことは2度となかった・・・・・・・


恒例のあとがきです。

なかなか、アレフガルドまで行きませんね。

表世界でするべきことがチェルトにはあと3カ所残っているので

そこを書いてから、アレフガルドのチェルトを書きたいと思います。

 

さて、今回苦労したところ・・・・・なのでしょうか。

自分でも、よくわからないのですが。

ちょっと前の気まぐれ日記にも書いたんですが

今回、書き始めたとき、「テーマがなかった」ので

訴えかける物がなかったなぁ・・・・・・

っていうのが1つ。

 

チェルトの冒険は後半になってから 文体を変えています。

(第55話の「自問」くらいから?)

最初の方は見るに耐えないのですが

後半はだいたいテーマを決めて書いていて

人に考えさせる文章を書くよう心がけているんですけれど

今回は、チェルトが、アリアハンに帰るだけだから、

それを文で書いても、単調なような気がしちゃって・・・・

また、大魔王ゾーマの出現をどのように書くか、

再度旅立つチェルトを母親はどのように感じるのか?

ゲームの方では、母親はゾーマの存在も知らないですから

ずっと平和な世界だと思っているんですよね。

それをそのまま、ゲームに忠実に書いていったの方がいいのか?

それともオリジナルストーリーで、心配する母親を書いたらいいのか?

悩みました。

 

宴のシーンで、チェルトの母親も招いて その場でゾーマを出現させ・・・・・・

という話の展開や、

または、チェルトだけ宴にでて 家に帰った後、

母親に素直に話して チェルトがまた旅立つというシーンとか書こうと思ったんですが

結局、チェルトは母親には内緒で出発、

しかし、母親はチェルトの表情から 親子間でしかわからない、

微妙な感覚的なもので ちょっと世界に、また何かが起きている・・・・・・

ということを気づいている 不安な母親という形で終わらせてみました。

 

そして、チェルトと母親が会うことはもう、2度とありません。

しいて、今回、テーマがあるとすれば、母親とチェルトの関係でしょうか。

あと、もう1つのテーマは「運命」

この言葉、あまり私は、好きじゃないんですが・・・・・・・

 

その人が、これからどうするのか、

これは運命だ・・・・・・・

ってよく、ありますよね。

でも、それって現実の世界じゃないんじゃないかな。

と思うんです。

 

でも、今回、最後にあえて、「もう娘と二度とあえない”運命”」を感じる

母親の様子を書いてみたかったんです。

(第141話・第142話)

運命って信じないんですけれど、

でも、血のつながった親子の間では

他の人には感じることのできない

何か、通じる物がある・・・・・・

なんとなくわかる・・・・・・・

そんな、曖昧で、不安な気持ちを今回の作品で描きたかったんです。

 

余談ですが

ちなみに今回ボツになった原稿は、 133、134話が

もともとは1話で チェルトがアリアハンの街に入った瞬間、

歓声につつまれ、 その中で、恥ずかしながらも、

母親と抱き合うシーンを書いたのですが

なんか書いているうちにくさくなってしまい、ボツにしてしまいました。

 

あと、普通にバラモスを倒すと手に入らないのですが、

「勇者一人でバラモスを倒す」とゾーマの出現”前”に

王様に謁見するシーンで 「バスタードソード」という剣をもらうことが

できるんですが 褒美とはいえ、世界を平和にしたすぐ後に、

バスタードソードという”武器”を褒美で もらうっていうのに

違和感があるんですよね。

(だって、武器がもう必要ない時代が来ているんだから)

なので、ゾーマが出現してから・・・・・

という設定で書いてみました。

本当は・・・・・・ 一番上で書いた、チェルトのあとすべきこと3つ

(ムーンの行方、ミリーとの再会、竜の女王と光の玉) まで

80000人記念で書こうと思っていたんですが、

間に合いませんでした。

無理に原稿を急いで書くより、

次回に回した方がいいかなぁ・・・ と思って。

それらを終えて、チェルトは闇の世界、

アレフガルドに 一人(と一匹で)旅立っていきます。


第143話 異世界

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