【第271話】

カンダタの想い


今日、魔王軍との大きな戦がある。

きっと、たくさんの人が命を落とすことになるだろう。

争いなんか、なければいいのに・・・・

しかし、自分達が生きるために、人間は戦わなければいけない。




「ついに来たか・・・・・・」


「えぇ・・・・・・」


私たちはメルキドの砦から出て戦地についた。

そこには、以前の戦の後がいまだに残っている。

またこの場でたくさんの人が命を落とすのだ。


遠くを見ると魔物らしき大群の砂煙が見える。

もう数十分したらここは戦場になるだろう。


「もう逃げられないぞ」


「わかってる・・・・・・」


「・・・・・チェルト・・・・・」


「・・・・・何?」


「何があってもお前の命は俺が守る」


「な、何よ、突然」


私はカンダタの突然の言葉で顔を赤くした。


聞き方によっては・・・その・・・・

男性からそんなことを急に言われると

だから・・・・・

そう・・・・聞こえるじゃない・・・・


それに何でこんなときになってそんなことを・・・

突然の告白をうけたような感覚で動揺した。



しかしカンダタは真顔になって言葉を続けた。


「お前はみんなの希望だ。

 負けは許されない。

 しかしこの戦いで勝利をしてもお前を失ったら

 アレフガルドに太陽は戻らない」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


「そしてお前にとってはこの戦いで終わりじゃないはずだ。

 来るべき最後の戦いは・・・・もう迫っている。

 その戦いはお前にしかできないものだ。

 

 それまでお前には五体満足で生き残ってもらわなければいけない。

 最後の戦いのために。

 そして最後の戦いでおまえは勝利をしなければいけない」


「カンダタ・・・・・・・・」


「だからこの戦いで命を落とさせるわけにはいかない。

 どんなことがあってもお前の命は守らないといけない。

 それが・・・・俺の役目だ」


「・・・・・・・・・・・・」


以前は剣を交えた相手にこんなことを

言われるとは思ってもいなかった。


「お前は後ろを気にせず戦え。

 ひたすら前を向いてそしてみんなを導くんだ。

 後ろから来る敵は俺にまかせろ」


カンダタは本心からそういうことを思ってそう言ったのか。

それとも別の心があってそういうことを言ったのか

私にはわからなかった。


ただ、今いえることはかつては敵同士だとしても

今は大切な仲間だ。

世界を守るために戦う大切な仲間だ。


私はこくりとカンダタを見てうなづき返した。


・・・・そういうあなたこそ、この戦いで命を落とさないでよ。

最後の戦いまでちゃんと生き残って・・・お願いだから・・・


第272話 メルキド大戦

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