【第313話】

クラーゴン


ガライさんは巨大な化け物、海の魔王を

銀の竪琴を奏でることで、攻撃するのをどうにか抑えていた。


その時人間の声とは違った声が頭の中に入ってきた。




”ニゲテクレ”


そう聞こえた。はっきりと。

その声と共に圧迫感もうける。


「あなた・・・・言葉がわかるの?」


私は圧迫感に耐えながら頭に響く声に問いかけた。


”チイサキニンゲンヨ、ワレハウミノヌシ、クラーゴンナリ”


「クラーゴン・・・・・」


サラマンダーと並ぶ伝説の生物の一つだ。

ラダトームで伝説の武具の資料を探していたときにも

書物で読んだことがある。


しかしクラーゴンは本来海の守り神として

称えられているくらいだ。

それにこの異常なまでの大きさ。

文献でも大きいとは書かれてはいたが

それでもクラーゴンの大きさは

船の数倍の大きさであるとの記述があった。

それだけでも充分大きいとは思うが・・・

もっとも書物に書かれていることがいい加減であったことや

クラーゴンにも個体差があることは考えられるが

この大きさは人知を越えていた。

しかし私は怯まなかった。

怯んだら巨大な圧迫感に飲み込まれそうだからだ。


「ニゲテクレって、そっちから襲ってきたんじゃない!」


私は相手が島の大きさの生物であることも忘れて真っ向から反論した。


”ワタシノ、ホンイデハナイ”


「どういうこと?」


”タタカイタクナイ、コノバカラ、ニゲタイ

 シカシ、ソレハユルサレズ”


戦いたくない?

逃げたくない?

クラーゴンは襲いたくないのに、

私達がいる軍船を壊したってこと?

それは・・・・もしかして・・・・誰かに操られているということなの?


”ソウダ”


私は言葉を発しなかったが、クラーゴンから言葉が返ってきた。

私が考えていることもわかるのだろう。

私も言葉を発しず、考えを伝えることにした。


”もしかしてあなたを操っているのは・・・・”


大魔王ゾーマしか考えられなかった。

いったいどんな魔法をかけたの!


”ノロイノイッシュダ”


”呪い?”


”ダイマオウハ、ワタシニ、ハイカニナレ、ト、イッテキタ

 ワタシハコトワッタ。ダイマオウハ、ワタシカラ、リセイヲウバイ

 ウミニイルモノ、スベテヲタベサセ、スベテヲハカイサセタ”


つまり大魔王の配下にならなかったクラーゴンに呪いをかけ、

辺りに有るものをすべて食べさせ、破壊をさせたということね。

以前竜の女王様から大魔王ゾーマは「結界」と呼ばれる

古代魔法を手にいれたとおっしゃっていたが「呪い」も

古代魔法の一つかもしれない。


この回りに魚などがまったくいないこと、

何故、海の魔王がここまで巨大化したのかはわかった。


大魔王ゾーマ・・・・戦うつもりもないものまで

無理に利用させるとは・・・・


私は大魔王にさらなる怒りを覚えた。


第314話 呪いを解く手段

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