【第433話】

勇者の挑戦4


ゾーマの雷は私を貫いた。

一撃で体の自由を奪われる。

私を助けてくれたのははぐりんの声だった。

私の心に勇気が蘇ってきた。




聖なる守りと王者の剣から発せられる光は回りの闇を払拭するほどであった。

しばらくすると光が消える。

闇が消え去った目の前にいるのは

先ほどとは似ても似つかないゾーマの姿であった。


大きさは私の五倍くらい。決して魔物の中では大きいとは言えない。

これが魔のすべてを統括する魔物の姿とは予想外だった。


”よくも、余の姿をさらしたな!!!”


ゾーマが怒りの声をあげる。


何故聖なる守りが光りだしたの?

ゾーマの真の姿を表したの?

疑問が頭をかすめる。


そういえば、竜の女王様が以前言っていたことを思いだした。


ゾーマは失われた古代魔法「結界」を手に入れたため

いかなる力を用いても大魔王を傷つけることはできない、とそうおっしゃっていた。

そして、その「結界」を破るため、私は神竜の試練を受けた。

勇気と優しさ、その心が光の玉となりゾーマを破るものだと神竜は言った。


今のが光の玉の力だったのか。


”結界を破る術を持っていたとは。

 もう…手加減はせんぞ”


静かに、怒りをおさえるようにゾーマの低い声が聞こえる。

さすがは大魔王、怒りで我を忘れるなどはないようだ。

ゾーマは音も無くすべるように、間合いを詰めてきた。

結界を破ったからといって、ゾーマから感じる圧迫感は変わらない。


だが剣と魔法も通じるようになったはずだ。

私は王者の剣を振りかざす。

ゾーマの姿が消えた。


瞬間移動は健在か!


私はその場を離れ、呪文の詠唱に入る。

ゾーマが現れた瞬間、私の声が響き渡る。


「ライデイン!!!」


ゾーマは私に背後に現れたので近くの私も巻き沿いをくらう。

しかし呪文への耐性を調べる為、覚悟の上だった。


二度目ライデインがゾーマを包み込もうとする。

ゾーマは腕を上げ、頭上に障壁を張った。

稲妻はゾーマの頭上で分散し、辺りに電撃が飛び散る。


はじけ飛んだ私にライデインがあたった。


「っっっっ!!!!」


痛みと痺れが襲う。

だが直撃ではないので、倒れるほどではない。

精神力を高め我慢する。


ゾーマは無傷だった。ライデインがはじかれたようだ。

しかし今度は障壁を張って防御をした。やはりゾーマに魔法は通じるんだ。


”稲妻など余に効かぬといったであろう”


同じ攻撃を唱えて、なめられたと思ったのかゾーマは嘲笑した。

近距離から凍える吹雪をはく。

私はベホマを唱えながら勇者の盾を構え、斜め後ろに飛び距離を取る。


盾と鎧に霜ができ、寒さが私から熱を奪う。

だが直撃で無ければ、ベホマで回復できる。


ゾーマの姿が消えた。

私は勘で後方180度に弧を描くように剣を振るう。

手ごたえがなかった。


”上だ”


ゾーマの感情の無い声が聞こえる。

瞬間今いる場所を横っ飛びで離れた。

そこへ、大魔王の「マヒャド」の氷の柱が突き刺さる。

頭に直撃していれば、ブルーメタルの兜があるとはいえ危なかった。


声を発して相手に知らせる辺りゾーマにはまだ余裕があるのだろう。

だが、それが命取りだ。

私にも若干だが余裕がある。

今の攻撃もゾーマの声が無くても回避ができただろう。

最強の敵と命をやり取りするをしているのに、余裕があるとは滑稽なことではあるが

闇を振り払ったことで、何故か私の体が軽くなった感じがする。

ゾーマの闇に人を束縛するような力があったのか

それとも王者の剣と聖なる守りが私に力を貸してくれているのかはわからない。


上空に浮かんでいるゾーマに向かって王者の剣でバギクロスを放つ。

ゾーマは何度目になるかわからない瞬間移動で姿を消した。

またもやライデインの詠唱に入る。


ゾーマが現れた瞬間


「ライデイン!!!」


三度目のライデインが炸裂する。

ゾーマがまた腕をあげて障壁を張った。

私は障壁の中に突っ込み接近戦を挑む。


ライデインは障壁に阻まれ、辺りに飛び散った。

しかし今度はゾーマに障壁を張らせ、その中に入りこんだ為ダメージは受けない。

そして障壁を張らせたのは隙を作るため。

ライデインはオトリである。

手を上げて障壁を張っているゾーマは無防備だ。


直接剣の間合いに入るにはまだ距離があった。

瞬間移動をさせない為

王者の剣の魔力を解放しバギクロスを放った。


第434話 勇者の挑戦5

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