【第14話】

生き残った7人


 再度応接間に集まったのは、ぼくと真理、俊夫さん、小林さん、香山さん、啓子ちゃん、キヨさんの7人だった。

 夏美さんの部屋からはノックしても相変わらず返事がなかった。同様に可菜子ちゃんの部屋からも返事がなく、扉は硬く閉められていた。啓子ちゃんの話によると、二階に戻ったあと、啓子ちゃんの部屋にいくため、可菜子ちゃんは荷物をまとめるため、自分の部屋に戻ったが、そのあと音沙汰がなかったとのことだった。啓子ちゃんは怖くて部屋の外にでることもできず、部屋の中でじっとしていたらしい。

 正岡さん、美樹本さんに続き、村上さんまで惨殺死体で壁に杭を打ちこまれ殺されており、さらに、手のひらにアザがあるみどりさんの部屋には誰もいず、可菜子ちゃん、夏美さんの部屋からは物音さえしない。また正門は開いており、たぶんみどりさんは館の外に出たと思われる。

 念のためキヨさんにもう一度正門の鍵は閉めてもらった。みどりさんが何らかの手段で館の正門の鍵を持っていて外に出たのであれば鍵を閉めても中に入れずはずだ。

 時間は夜中の2時を過ぎ、みんなの顔は疲れきっていた。

「村上はんも、死んでしもうたか・・・・」

 いつも陽気な香山さんも疲れのためひどい顔だ。

「夏美は無事なんかい・・・・・」

 香山さんの心配ももっともだ。

「マスターキーを使って夏美さんと可菜子ちゃんの部屋も調べたほうがいいのでは?」

 小林さんがみんなに話した。

「そうやな、緊急時やさかい。すまんがみんな二階にきてくれ」

 香山さんの顔はますます青くなっていた。ぼく達は7人一緒にまず、夏美さんの部屋にいった。キヨさんからマスタキーを借りて、香山さんが扉をあける。すると・・・・血の臭いが立ちこめていた。

「夏美!!!!」

香山さんの叫び声がした。

ひどかった・・・・夏美さんの首無し死体がそこにあった。胴、腹、足に切り刻まれ、手には杭が打ちこまれていた。胴には先ほどキヨさんが言っていたネックレスもなくきっと犯人が首ごとどこかに捨てたのだろう。

「夏美!!!!!!!!!!」

 香山さんは泣きながら夏美さんの代わり果てた血だらけの死体を抱きしめた。

「夏美、夏美、夏美・・・・・」

 何度も夏美さんの名前を呼ぶ。愛する妻を失った香山さんの苦しみは想像することはできなかった。愛する者を失う気持ち・・・・もし真理が殺されていたらぼくは地獄の果てまで犯人を探し恨みつづけるかもしれない。

「クソォ・・誰がこんなことをしたんや!!!」

 香山さんは涙を流しながら、床に何度も拳をたたきつけた。その拳の音と、香山さんの泣き声だけが夏美さんの部屋にこだました。

「夏美・・・・わいはどないすればいいんや・・・・」

 あまりに惨い殺され方だった。4人目の犠牲者だった。しかも、まだ可菜子ちゃんもいる。その場を動くことができない香山さんを置いてぼくと俊夫さんと啓子ちゃんとキヨさんで可菜子ちゃんの安否を確かめるため部屋にいった。真理と小林さんは香山さんを見てもらっている。俊夫さんが可菜子ちゃんの部屋の鍵をあけた。

「か、可菜子!!!!」

 啓子ちゃんの悲鳴があがった。目の前に直視できない光景が広がっていた。

 可菜子ちゃんが・・・・可菜子ちゃんであったものが、両腕の手のひらに杭を打たれて壁にぶら下がっていた。

そしてやはり、首、胴、腹が切りとられ、足部はなかったが胴から生えている腕に杭がうちこまれ、絶命していた。顔は無残にもつぶされていた。頭があったはずのところからは、大量の血が流れたあとがあり、惨殺という言葉しか思い浮かべられなかった。血は既にかたまりかけていて、辺りはむせかえるような血の臭いが充満しており吐き気がする。

「ど、どうして・・・・・こんなことが・・・・・」

 啓子ちゃんは目に涙を浮かべ俊夫さんの胸に顔を埋める。その俊夫さんも厳しい表情で死体を見ていた。

「誰がこんなことを・・・・・・」

 村上さんに続き、夏美さんと可菜子ちゃんも殺された。5人もの人がこの館で犠牲になった。


第15話 地獄絵図

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