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【22、幻界へ】

   シドは地上世界と地下世界を自由に行き来できるように、再び赤い翼を改造してくれた。赤い翼の先端に巨大なドリルを取り付けたので、穴を開けてまた地上に戻ることができるのだ。
「俺は飛空艇を改造するのがやっとでお前たちの戦いに加わることができん。無念だ!」
「シドさんは早く全快させることが先決ですよ。私シドさんの分も、リディアやセシルさん達と一緒に頑張ります!!」
 ネフティはあれ以来リディアとすっかり仲良くなり、お互いに名前を呼び捨てできるまでになっていた。そして彼女もセシル達と一緒に戦うことを決意した。
 彼女が旅に加わることには、最初セシルとエッジは強く反対したが、それ以上の勢いでリディアは説得した。気弱なネフティがそこまで言ってくれたことに対してはむしろ喜ぶべきだとリディアは思った。
「カインがいなくなって戦力不足が痛い所なのにどうして反対するの?彼女なら充分戦力になれるはずよ!!」
 セシルとエッジは女の子であるネフティを危険な目にあわせたくはなかったし、彼女の力をまだ把握できていなかったので彼らが反対するのも無理はなかったが、リディアの強気の説得に負けてしまった。
 ネフティが仲間に加わることに反対したものがもう1人いた。ドワーフの王女ルカだった。
「そんな!リディアだけでなく、ネフティまで行っちゃうなんて!!」
「大丈夫、ルカ姫。これは永遠の別れではないのですから!!」
 ルカは、リディアやネフティとすっかり仲良くなっていたので、いなくなるのをひどく寂しがった。ネフティはルカに必ず生きて戻るからと約束した。
                    ☆
 セシル達は幻界につながっているといわれる洞窟へとやってきていた。
「ここ、前に通ったことある!」
 リディアが言った。薄暗いが、邪悪な気配はない。時々闇の力によって凶暴化したモンスターが現れたが、3人の立派な戦士と2人の強力な魔道士がいるので問題はなかった。
「全く可愛いツラしてやりやがるぜ!こいつ本当に小娘か?」
 竜の血を引くネフティの攻撃力と体力はセシルやエッジよりも勝っていた。エッジが舌を巻くのも無理はなかった。
「おっ、またあの蜘蛛女だぜ!」
 一行の前にアルケニーなるモンスターが現れた。上半身は人間の女性であるが、下半身は醜い蜘蛛の姿をしていて、ものすごい地震攻撃をしてくるが、ローザがメンバーにレビテトという身体を浮かせる白魔法をかけてくれていたので、それほど強敵ではなかった。おまけにダメージを受けないので通常攻撃だけで倒してしまった。
「まあ、とにかく奥にすすんでみようぜ!もしかしたらリディアのいうように幻獣に会えるかも知れねえ!!」
 一行は恐れながらも洞窟の奥へ奥へと進んだ。
                    ☆
 セシル達は町にやってきた。リディアは目を輝かせていた。
「ほら、ここが幻獣の町だよ!皆に紹介してあげる!!」
 リディアにとってここは第二の故郷なのだ。彼女は幻獣たちに挨拶を交わし、幻獣たちもリディアを見て喜んでいた。
「よく帰ってきたな、リディア!」
「お帰り、お友達も一緒なのね!」
 幻獣たちの様子を見ると、皆リディアが大好きなようだった。
「リディア、もうどこへも行かないで!!」
 小さな幻獣の子供がリディアに引っ付いてはなれなかった。リディアを姉のように慕っているようだった。
「ごめんね、ゆっくりしている時間はないの!今から幻獣王と王妃様のところへ行かなくちゃならないから!!」
 リディアはそう言って名残惜しそうにその子から離れた。幻獣の子供はいかにも泣きそうな顔をしていた。リディアは少し離れた所から手を振って叫んだ。
「必ず、戻ってくるから!!」
 リディアの呼びかけに対して幻獣の子供も手を振っていた。
「約束だよ!!」
 リディアはあの子のためにもこの戦いには必ず勝たなくてはと気を引き締めた。
                    ☆
 リディアはセシル達をと大きな建物の前に連れてきた。そこには何と、読みきれないほどの大量の本が並べられていた。
「すごい本だな・・!」
「どれくらいあるのかしら?」
 そこは幻界図書館だった。エッジはさっそく何か本を探しているようだった。
「エッジ、悪いけどゆっくり本を読む時間はないよ。これから幻獣の王様と王妃様に会わなくちゃならないし・・。」
「ちぇっ、やっぱりダメか・・。」
 エッジががっかりしているので、後でどんな本が読みたかったのか聞きだそうとしたが、エッジはどうでもいいと答えた。たいした本ではなかったらしい。
「でも幻獣の王様とこの図書館と何の関係があるの?」
「この奥にその2人がいらっしゃるの。とにかく着いて来て!!」
 リディアは4人を地下の奥深くまで連れてきた。中には幻獣が数名と、青いドレスの中年の美女と、立派な白いひげをたくわえた老人がいた。セシルが、老人に話しかけると、老人は世間話などをはじめた。
「ほう、こんな所までよう来たの。そう言えばトロイアという国は女ばっかりの国らしい。行ってみたいのう!!」
 老人はとぼけたことばかり言っていた。リディアは苦笑しながら軽く老人に頭を下げ、中年の美女のほうに話しかけた。
「王妃様、お久しぶりです。今日はお願いがあってここへ・・。」
「よく来てくれました。きっと現れるだろうと思っていたのですよ!!」
 リディアはこの女性と抱擁をかわした。ネフティはリディアにこの女性が誰であるか尋ねた。
「リディア、この方は・・?」
 女性はネフティの姿を見てにっこりと笑っていった。
「私はこの幻界の王妃アスラです。あなたにお会いするのは初めてですね。」
「ネフティと申します!!」
 ネフティは礼儀正しくひざまずいた。アスラは興味深そうにネフティをしばらく見ていたが、ゆっくり話している時間はないので本題に入った。
「私の力を借りに来たのですね。力になりたいのは、やまやまですが、この幻界の掟としてあなたたちの力を見極めなければなりません。私と戦う自信がありますか?」
 アスラはセシルを見て言った。リディアもセシルを見ている。セシルはしばらく考えていたが、やがて、はいと、返事をした。
                    ☆
 アスラはあまり攻撃を仕掛けてくる様子はないが、リディアの黒魔法やセシルやネフティの攻撃を喰らって強いダメージを受けてもすぐに回復魔法で回復してしまう。
「これじゃ、きりがないわ!」
「普通に攻撃していたら、こっちの体力がきれるぜ!」
 ローザはアスラが白魔法の使い手であることを見抜いた。魔法が使えなくなれば彼女は回復することができなくなる。ローザはサイレスを唱えた。しかしアスラには効果がなかった。
「いい所をついているけれど、私にはその魔法は効きません!」
 アスラが澄んだ声で言った。人型のときと違い、その身体は異様に大きく、顔が3つもあるグロテスクな姿をしているが、その声は優しく美しかった。リディアはハッとした。そう言えば幻界図書館の本の中に幻獣神について書かれた本があった。それには確かこう書いてあった。
「幻界の女王アスラ・・・幻獣王の妻にして幻獣王への関門でもある。彼女の力をうまく利用し、打ち勝った者のみが、幻獣王の姿をみられることだろう・・・」
 リディアはローザにささやいた。
「アスラの魔法を封じる方法じゃなくて利用するの!あの魔法をこっちに向ける方法はないの?」
「リフレクね!」
ローザは魔法をはね返す魔法リフレクをアスラにかけた。これでアスラは体力を回復することができなくなった。パラディンのセシル、忍者のエッジ、バーサーカーのネフティの攻撃を受け、アスラはようやく降参した。
「見事です!あなたたちが、強くて正しい心の持ち主だということがよくわかりました。リディア、今後私の力が必要な時はいつでも呼びなさい!!」
「ありがとう、王妃様!!」
 2人は目を合わせてうなずいた。そばでアスラの試練を受けていたリディア達を、白いひげの老人はじっと見ていたが、やがて彼のほうからリディアに話しかけた。
「よくぞ、我が妃を打ち破った!人間でアスラを倒した者などお前たちが初めてじゃ!!」
「あなたはもしや?!」
 セシルは老人の顔をよく見た。老人の顔がだんだん鋭くなっていく。顔だけではない。身体もどんどん大きくなっていく。そしてそれはたちまちとぐろを巻いた巨大な竜に変っていた。
「ゲゲッ、リヴァイアサン?!本当にこんなものいたのかよ!!」
 エッジは大海原の主の噂を聞いてはいたが、まさかこの目で見ることになるとは思わなかった。
「さあ、遠慮なくかかってくるが良い!!」
 海竜の姿となったリヴァイアサンは人型のときと違って重々しい声で言った。
                    ☆
 幻獣の王だけあってリヴァイアサンの強さは伊達ではなかった。5人は大津波をくらって生きているのが不思議なくらいであった。
「つ、つえー!こんな奴に勝てるわけねえ!!」
「だめだわ。明らかに力不足よ。」
 リヴァイアサンの弱点ははっきりしている。水の属性を持つものは、たいてい雷系の攻撃に弱く、幻獣の王とはいえ例外ではなかった。しかしこっちが決定的なダメージを与える前に、リヴァイアサンのほうが攻撃してくる。つまりこっちの身が持たないということである。
「ローザ、大丈夫か?」
「ええ、あと一回なら皆にケアルガをかけられるわ。」
 ローザは魔力も体力も底をつきはじめていた。それはリディアやエッジも同じであった。セシルまでもが回復役にまわっていた。
「ダメだ。僕のケアルラじゃ、たいした回復力にはならない。」
 壊滅的なパーティメンバーの中で、一番マシな状態だったのが、半竜であるネフティだった。彼女は攻撃力も高いが、防御力、体力にいたっては他のメンバーとは比較にならないほどであった。しかし彼女は単純攻撃しかできない自分の身をこの時ほど恨めしく思ったことはなかった。
「何ということ!私の力なんて何の役にもたたない。せめて私の体力を他の人に分けて上げられたらいいのに!!」
 ネフティは無意識のうちに祈っていた。ネフティの身体が輝きだしたのだ。
「エッ!この力は!!」
 ネフティは自分の身体に翼が生えていることに気が付いた。ネフティは新しい力に目覚めたらしい。
「白き癒しの風よ!我が竜の血の元に集まりたまえ!!」
 ネフティはどこで覚えたのかごく自然に呪文を詠唱していた。ネフティの不思議な呪文と共に、皆の身体が白い風に包まれた。傷口がみるみるふさがり、失われた体力は完全とはいかないまでもかなり回復していた。
「ありがとう、ネフティ。これで私はラムウを呼び出せるわ!」
「僕も剣の攻撃にまわるよ!」
 リディアの呼び出した雷の幻獣ラムウは、裁きの雷と呼ばれる電撃にてリヴァイアサンを直撃した。リヴァイアサンは苦手な雷系の攻撃を受けてようやく降参した。
「よくやったのう!このわしまで倒すとは、たいしたものじゃ!!」
 リヴァイアサンは人型の姿になると、とたんにとぼけた老人に戻っていた。いかにも好々爺という感じでニコニコとしていた。
「なんか調子狂うな・・。」
 エッジがセシルにそっとささやいた。
「約束通りこのわしも力を貸すとしよう。この老いぼれの力が必要な時はいつでも呼ぶが良い!!」
「ありがとうございます!」
リディアはリヴァイアサンに礼を言ってその頬に何と口付けした。リヴァイアサンは飛び上がって喜んでいた。
「やっぱり長生きはするものじゃ!!若い娘はよい!」
「あなた、調子に乗るものではありませんよ!!」
 アスラは軽くリヴァイアサンをにらんでいた。セシル達は、これが先ほど戦った幻獣かと思うと不思議な気持ちだった。
「コホン、それはそうと、もう一ついいことを教えてやろう!実は北西にあるシルフたちの住処に、モンク僧の男が運ばれておった。心当たりがあるなら行ってみてはどうかの?」
 リヴァイアサンはアスラに一発パンチを頂いてから、真面目な顔になって言った。モンク僧と言えばセシル達の脳裏には1人の男が浮かんだ。
「まさか、ヤンが?!」
「行ってみようよ、セシル!」
セシル達はリヴァイアサンに礼をしてから部屋から出て行った。最後に出ようとしたネフティは、リヴァイアサンに呼び止められた。
「半竜の娘よ、自分の竜としての力に少しは目覚めたようじゃのう!!」
「幻獣王、あなたは私のことをご存知なのですか?!」
 ネフティは驚いてリヴァイアサンを見上げた。リヴァイアサンはそれには答えず、ただ一言こういった。
「リディアの力になりたいなら、幻獣神に会うがよい!」
「幻獣神・・。」
 ネフティはまだ聞きたいことがあったが、リヴァイアサンはそれ以上何も言わなかった。ネフティはリヴァイアサンに一礼し、皆の後を追っていった。
                    ☆
 ネフティは竜の力にめざめ、2つもの新しい力に目覚めたため、それから先の戦闘が楽であった。仲間の体力消耗が激しい時は、青魔法ホワイトウィンドで回復させたりもしてくれた。彼女は竜の血に目覚めたことにより、青魔法なるものを使用できるようになったのだ。それに彼女はトランスといって形態をかえることもできるようになった。この状態になると、彼女は翼が生えて身体からまばゆい光を放ち、より竜に近い姿となる。しかも全ての能力が上がり、宙を浮いているのでまさに無敵状態といえる。
「しかし嬢ちゃん、あのほうが美人だぜ!」
「神秘的よね!」
 ネフティはトランスすると、鎧を脱ぎ捨てて下着姿となる。翼にとって装備品が邪魔になるからであるが、彼女は小柄ながらスタイルがいい。また、藍色の髪や、翼、尾はサファイアという宝石のように輝いている。顔立ちはいつもより大人っぽく見え、さながら竜の女神というところだろうか。
「役に立ててうれしいです!」
 ネフティは戦闘後そう言ってはにかみ笑いをしていた。しかし姿は変っても、おっとりとした性格のほうは変らないようだった。

第23話 「シルフとヤンと恋女房」
第21話 「心の闇」に戻ります
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