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【39、月の海の悪魔】

 セシル達はさらに奥まで進んできていた。セシル達はアッと驚いていた。途中から地面がまるで人為的に造られたようにクリスタルの床になっていたのだ。
「ここにも何か強力な力を感じる。この力は幻獣かな?」
「おい、またあのダークバハムートみたいな奴か?」
 今から考えると、あれはかなりの強敵であった。何しろ一歩間違えば幻獣神となっていたかもしれないのだ。リディアはしかしこの波長はもっと別の幻獣だと感じた。
「ううん。それよりは多分弱いと思う。でもこの波長、確かに知っている幻獣と同じなの。何かの間違いだとは思うけど!!」
 リディアは身震いしていた。そしてその正体を見た時、リディアは衝撃のあまり声も出なかった。巨大な翼のないとぐろを巻いた海竜の姿に、エッジは思わず声をあげた。
「おい、嘘だろう?!どうしてあんたがこんなところにいる?!」
 そこにいたのはどうやら幻獣王リヴァイアサンであった。
                    ☆
 リヴァイアサンはセシル達に話しかけてきた。
「元気にしておるか?」
 リヴァイアサンは優しい口調で言った。
「はい、元気にしています。ところでなぜこのような所にあなたがいるのです?」
「実はお前達を待っておったのじゃ!!」
「何のために?!」
「お前達を倒すためじゃよ!!」
 リヴァイアサンはそういい終わるやいなや大きな津波を2回もしかけてきた。セシル、ローザ、そしてカインはどこか遠くに流されてしまった。残っていたのはリディアとエッジだけである。
「あなたはリヴァイアサンじゃない?!」
 リディアはその巨大な海竜を見上げる。確かにリヴァイアサンと姿形は全く同じだが、にじみ出る邪悪な気は隠せない。よく見ると身体の色も妙に毒々しい。
「俺か?俺は月の海の覇者タイダリアサンだ。」
 幻獣王リヴァイアサンとは打って変わって威厳も風格もない下卑た声で言う。
「貴様、よくもだましやがって!!」
 エッジは怒りで目をぎらつかせてタイダリアサンをにらみつけた。
「だまされる者がアホウというものだ。この世界で最後まで生き残れるのは力の強い奴ではない!頭の良い奴よ!!」
 タイダリアサンは下品な声で笑っていた。
「クソッタレ!俺はてめえのような奴が一番むかつくぜ!!」
「おお、いい顔だな!俺は人が苦しむのを見るのが大好きなのだ。まさに他人の不幸は蜜の味ということだな!!」
 エッジの怒りは頂点に達した。エッジは相手が海に棲む者ということで、雷系の攻撃に弱いだろうとにらみ、雷迅を唱えた。相手はリヴァイアサンよりはるかに小物である。これで一発だろうと思った。激しい稲妻がタイダリアサンに襲い掛かった。しかしタイダリアサンはそれほどのダメージを受けていなかった。
「この程度の雷などこわくもなんともないわ!クカカカカカ!!」
 タイダリアサンはエッジの神経を逆撫でするかのごとく下品な馬鹿笑いをする。怒りで我を忘れそうになっているエッジをリディアがなだめる。
「あいつの挑発に乗っちゃダメだよ!あんたを怒らせようとまだ何か企んでいるかもしれないよ!!」
「でもよ・・。」
 タイダリアサンはリディアに目を向けた。
「ほう、貴様は召喚士か?なかなか美しい女だな!!」
「な、何よ?」
「その美しい顔が苦痛にゆがむ様を見てみたいものだな。」
 タイダリアサンは口から渦潮を吐き出した。渦潮はリディアの身体を抱きこんでいく。
「な、何これ!?」
 リディアは必死で抵抗するが、息ができずにもがき苦しんだ。エッジは何とかリディアを助け出そうとするが、彼女に追いつくことすらできない。こうしている間にもリディアの体力はどんどん失われていく。
「おい、どうして女のほうをねらう?!」
 エッジはタイダリアサンをにらみつける。タイダリアサンはその様子をさらに楽しんでいるようだった。
「フハハハハハ!俺が憎いか?許せんか?!もっともっと憎むが良い。俺は人が憎しみに染まり闇に堕ちてゆくのがもっとも好きなのだ!!」
                    ☆
 リディアはタイダリアサンが何を望んでいるのかわかった。タイダリアサンはエッジを闇に陥れようとしているのだ。
「絶対に負けられない!!あたしはこのままやられたりはしない!!」
 リディアにはまだ魔力が残っている。さすがにこの魔力ではバハムートは召喚できないが、タイダリアサンに対抗できる召喚獣がまだ残っている。リディアはその召喚獣の名前を呼ぶ。
「大海原の偉大なる王者リヴァイアサンよ!!汝が主、リディアが命ずる!!波を呼べ!悪しき者をその力で流すがよい!!」
 本物の幻獣王が姿を現した。
「タイダリアサン、邪悪な月の海の悪魔よ・・!!」
「けっ、幻獣神に尻尾をふるチンケな海竜ごときが、このタイダリアサンに何のようだ?!この俺はあいにく取り込み中だ!さっさと失せやがれ!!」
 タイダリアサンは恐れ多くも幻界の王者に無礼な口を利く。
「消えうせるのは貴様のほうだ!!この薄汚い海竜のツラ汚しめ!!」
 リヴァイアサンは大津波を引き起こした。
「おい、幻獣の王様よ!あいつも海竜の一種だろう?あんたの攻撃なんか奴にきくのか?」
 エッジはリヴァイアサンを心配した。
「まあ、見ておれ!!」
 リヴァイアサンはみるみる波を呼び寄せ、タイダリアサンに大津波を浴びせる。タイダリアサンはこの程度の津波と、あざ笑っていたが、急に苦しみだした。
「な、何だ?この水は?!く、苦しい!!」
「まぶしい陽の光をたっぷり受けたあの青き星の海水だ!!貴様のような骨の髄まで腐った者には、苦痛であろう・・!!」
 リヴァイアサンは空中に落ちてくるリディアをその巨大な背中で受け止めて言った。
「幻獣王様、ありがとうございます!!」
「うむ、よくぞ私の名を呼んでくれた!!」
 感動の対面などしている場合ではない。タイダリアサンは苦しんでいるがまだくたばってしまったわけではない。
「今だ、奴にとどめを!!」
 リヴァイアサンはエッジの頭上から声をかけた。
「クソ!こんな時に風魔手裏剣がねえ!!」
 風魔手裏剣や他の道具は、最初の大津波の連発を受けてどこかに流されてしまっている。他に武器といえばエッジの腰に刺さっている2本の忍刀のみであった。そのうちの一つムラサメはとても投げられそうにない。そしてもう一本のエッジのお気に入りの忍刀菊一文字が目に入った。
「こいつは気に入っているが、俺にはもっと大事なものがあるからよ!!」
 エッジはいっしゅんためらいながらも菊一文字に手をかけ、それを抜いてタイダリアサンに投げつけた。タイダリアサンはギャーというすさまじい悲鳴をあげて解けていった。
 リヴァイアサンはリディアをエッジのそばに降ろしてやり、元の世界へと戻っていった。
「見事じゃ!若き忍者の王子よ。リディアのこと頼んだぞ!!」
「ああ、任せておけ!!」
 エッジは半ば気を失いかけているリディアを託され、彼女を支えながらリヴァイアサンを見送った。
                    ☆
 エッジはリディアを抱きかかえて腰を下ろした。
「ごめんね、エッジ!あれ大事な武器だったのでしょ?!」
 すまなそうにいうリディアにエッジはあっさりと言ってのけた。
「バ、バカ野郎!あんなものなくたって俺は充分戦えるぜ!!」
「うん・・。あんたは強いからね・・。」
 リディアはやや弱気に言った。
「あのなあ、おめえが気にすることはねえんだ!俺はああいう骨の髄まで腐った野郎はぶっ殺さなきゃ治まらなかったのだからな!!第一おめえがそんなしおらしいと調子狂っちまうぜ!!」
 エッジは顔を少し赤らめて言った。リディアはちょっとすねたようにそっぽをむくと、さっきまでタイダリアサンがいた場所に、何かひどく輝いている物があるのに気付いた。
「エッジ、あれは何かな?」
 エッジの腰のムラサメが共鳴するかのように輝き始めた。エッジは吸い寄せられるようにその耀く物に近づいていった。それは一本の大きな忍刀であった。その柄には正宗と彫られていた。
「こいつはすげえ!!伝説の忍刀マサムネか!!」
 エッジも詳しいことは知らないが、この世に一本しか存在しないと言われる忍刀があった。それが神刀マサムネである。妖刀ムラサメと共に持つ者を選ぶというが、ムラサメは多くの血を欲する殺人剣であるが、マサムネは人を救うために悪を斬る活人剣だと言われている。
 エッジはマサムネを手に握ると、今までもやもやしていた自分の中の醜い感情がきれいにおさまっていくのを感じた。
「リディア、歩けるか?」
「うん、ゆっくりなら・・。」
「それじゃ、セシル達を探すぞ!!」
 これからゼムスの元に向かうのに2人きりでは心もとない。エッジとリディアは仲間を求めて静かに歩きはじめた。

第40話 「決戦前」
第38話 「双子の屍竜」に戻ります
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