【第106話】
野営
巨大ムカデとの戦いで仲間を一人失った。
仲間の死体は簡単にトールが埋葬したあと、俺達は再度イシスに向かうことにした。ここにいたら、また魔物がやってくるだろう。
日が落ちた。昼間は砂漠を歩きつづけたが夜は気温はかなり下がった。寒暖の差が激しいな。
親方の提案で、野営をすることにした。火を起こし、テントを張る。
見張りも東西南北4人立てる。
「こんなところで野営するなんて、生きた心地がしないよな・・・」
仲間の一人がつぶやく。
「まったくだな」
俺もうなづいた。
「さっきの魔物がまた地面からでてきそうで怖いよな」
「あぁ・・・」
魔物よけとして、火もたいてある。たいていの動物や魔物は火を怖がる。だが、さっきの大ムカデは炎をはいてきやがった。当然、火には耐性があるだろう。
「なぁ、親方」
「なんじゃ」
「親方はゼネテスと旅をしたとき、この砂漠で野営したのか?」
いくら親方が強くても、この砂漠を二人で横断して、よく無事だったと思わされる。
バラモスが復活するまでは、魔物の心配もさほどなかっただろうがあんな魔物に夜、寝ているときに奇襲されたら戦えるだろうか。
「いや、夜も強行したわい。
とどまるほうが危険だと思ったからの。
年寄りにはこたえたが」
「そうか・・・」
たぶん、親方とゼネテスだけなら、イシスまで一気にいけるのだろうがこれだけの人数が集まると体力の差がでてくる。
結局遅いものにある程度あわせてでてくるので野営をするのは仕方がなかった。
俺もまだ体力に余力はあるが、慣れない砂漠でかなり疲れていた。
「あとどのくらいで着くんだ?」
俺が聞く。
「明日の朝早く出れば、昼過ぎにはつくんじゃねぇのかな」
ゼネテスが干し肉をくわえながら口をはさんできた。
「そうか・・・でも、もう戦いははじまっているんだろな」
「どうかな?
俺が行ったときは、とりあえずイシスの兵が魔物達を退けたからな。
犠牲者もでたが、魔物の軍も全滅させたらしい。
魔物達が断続的に襲ってくる可能性はあるだろうが・・・
イシスの街で情報を集める時間もあったからな。
もしかしたら街で休む時間もあるかもしれない。
まぁ、期待はするな」
「あぁ」
「だが、イシスの兵に余力がないのは確かじゃ。
わしらが戻って、またイシスに向かっている間に
攻め込まれているかもしれないし、
あと数回攻め込まれたら、もう持たないじゃろう」
親方が言う。
「敵を全滅させられればよいが・・・」
魔王かなりの年月をかけて、手下を増やしたことから、無尽蔵に魔物がいるとは思いたくはない。
数には限りがあるはずだ。まずはイシスで魔物を減らし、そのあと各地の勇者がバラモスを倒せば戦いは終結するだろう。
「イシスに着いたら、我々は一般の傭兵志望として
イシスに入り込む。
さすがに身分はあかせんからな」
それはそうだ。盗賊の集団が街の中にいえるというだけで、混乱しているイシスに略奪目的できたのかと思われるだろうしな。
親方一人だったら、わざわざそんなことをしなくてもイシスの宿に滞在し、戦いがおきたら加勢に行けばよいだけなのだがこれだけの人数がいるとそうはいかない。
「そういえば、バラモスってどこにいるんだ?」
俺は素朴な疑問を口にした。
「それがわからんのだ。
まだ魔王の声が聞こえてから日がたっておらんので
情報が集めきれていないというのもあるが」
「では、各地の勇者達はバラモスがどこにいるのかを世界各地回って
探さなければいけないんだな」
気が長い話しだ。しばらく戦乱の時代が続くのだろうか。
第107話 ミイラ男
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