【第117話】

罠の種類


数少ない兵力をどう割り当てるか話しあった結果、

イシスの兵士達には、魔導士の杖を大量に仕入れ、

地獄のハサミ対策をすることになった。


一方、俺達傭兵部隊はエビルマージを叩くために

イシス北に位置するピラミッドに向かうことになった。




ピラミッドへの立ち入り許可を得ていないので

今の俺達にできることはなかった。


今日までイシスに歩き通しで着いたが、

早々戦いに出たので心身疲れきっていた。


各々が宿舎で眠った。


夜、マヨイが宿舎の方にやってきた。


「女王様からピラミッド探索の許可を得ました。

 ただピラミッド内部の地図などはないようです。

 何しろ立てられたのが記録にないほど昔のようで・・・」


マヨイはすまなそうに言った。


夜は仲間も皆、起き待機をしていたので

全員マヨイの言葉を聞いていた。


「となると一からの探索になるか・・・

 まぁ、職業柄、罠とかはずすのはなれているけれどよ・・・」


ゼネテスが答える。


「職業柄・・・ですか?」


マヨイが疑問をもった顔をした。


マヨイが不思議がるのは無理がない。

罠はずしが得意ということは、盗賊であるようなことを言っているものだからだ。


「い、いや・・・俺達は冒険者を長くやっているから

 宝探しなども傭兵家業と一緒にやっているのよ。

 それで、慣れているってことでね・・・」


ゼネテスが言い訳をする。


「そうでしたか」


マヨイがほっとした顔をする。

マヨイが反応したように一般の国民には「盗賊」という職業が

受けいれられていないことを意味していた。


もし俺達が盗賊だと知ったら、イシスの傭兵隊を放り出されるだろうな。


俺達盗賊が命を張って戦うのと

イシスの兵が国民を守るために戦うのと

どのような違いがあるのかと思うがな。


「ワシらは明日、ピラミッドに向かおうと思っておる。

 距離的には戦いも含めて二週間で戻って来れると思うが

 万が一戻れなかった場合はワシらに何かがあったということじゃ。

 次の対策を考えてもらいたい」


「わかりました・・・できれば、そうならないよう、

 皆さんが無事に戻ってくることを心から祈っています」




マヨイが部屋から出たあと、俺達は輪になって話しあった。


「お主らにはここ最近の罠から一昔前の罠まで

 たいてい教えたつもりだが、ピラミッドのような太古のものだと

 罠の予想がつきにくいの」


親方が皆を見渡した。


「一般的なのだと、落とし穴、吹き矢、槍で串ざしなどですかね?」


仲間の一人が気味悪そうな顔をした。


「陰湿なのだと、部屋に入った瞬間閉じ込められ、

 死ぬまで出られないっていうのもあるな」


ゼネテスが自分の剣を手入れしながら口を挟んだ。


「魔法の罠も警戒しないといかんだろうな」


「魔法の罠?」


俺が問い返す。


「最近、王族が宝を守る罠として、ダメージ床というのがある。

 空間に電流を流すのじゃ。

 まぁ、たいていは床だけに電流が流れるもので、空間全体に電流を流す大掛かりなのは

 早々ないであろう。

 見かけはまったくわからないが、足を踏み入れた瞬間感電するってものじゃな。

 このダメージ床を回避するトラマナという魔法もあるが、かなり高度な魔法じゃな。

 空間全体にかかっている場合はトラマナが必要だが、

 床だけなら、石などで事前に電流が流れているかを調べ、

 あとはロープをかけて渡れば回避はできる。


 あとは瞬間移動をさせられる罠もあるの」


「ピラミッドのような複雑に入り組んでいる場所だと

 自分の方向が狂うから、厄介だな」


俺は親方の話に同意した。


「瞬間移動で、同じ建物内に飛ばされるのならまだマシだが

 以前、遺跡荒らしの冒険者から聞いた話によると

 建物の外や頂上に飛ばされる凶悪な罠があるようじゃ」


「頂上なら、たいていは目的のものがあるから、むしろ楽じゃねぇの?」


「頂上といっても、建物の”外”じゃ。

 もしピラミッドに瞬間移動の罠があり、

 自分が頂上に飛ばされたら、どうなる?」


「どうなるって・・・転げ落ちるのかな」


「そうじゃ。その遺跡荒らしの連中は、その罠にはまり

 数十人が外に放りだされ、全員即死だったようじゃ。

 運良くというか悪いというか、遺跡に入る間に怪我をして

 引き帰した者が、外から仲間が落ちていく様子を見て、

 その男だけ助かったというわけだが」


「それは・・・確かに凶悪だな・・・

 だけれど、そういう魔法の罠はどうやって回避すればよいんだ?」


「回避は難しいじゃろうな。

 とりあえず、二人ずつ組み、先方が剣や槍などで落とし穴などを警戒する。

 床を調べながら前進し、何も問題がなかったら、残りが合流する。

 ある意味おとりのようなものだが、全滅を避けるにはこのような手段しかなかろうて」


今回、地獄のハサミに対抗できるのは

雷神の剣を持つ親方と魔法が使えるトールしかいない。


この二人を守りながら、俺達で入れ替わりで探索をしていくしかないのだろうな。

命を張った探索になりそうだ。


第118話 ピラミッドの探索

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