【第75話】

宣戦布告


薬によるものか、魔法によるものか

俺は目の前の敵を倒すために

人間であろうと殺さなければならなかった。


今から遡ること2週間前のことになる。

俺は親方に呼び出された。




「親方、来たぜ」


「そこに座れ」


俺は進めれれた親方の椅子に座った。


「例の…件か?」


「そうじゃ」


「俺には、信じられねぇ。

  実際にこの耳で聞いてもな」

 

先日、全世界にどこからともなく不気味な声が響き渡った。


”我が名は魔王バラモスである。

 我に従え。

 我の傘下に入るのであれば、奴隷としてあつかってやる。

 だが我の目的を阻むものは死より惨い償いをさせてやろう”


自らを魔王と乗る、バラモスという者から

世界に向けて宣戦布告があった。


魔法を使うことにより、遠くにいる人間にも

声を伝えることでさえ、信じることができないのに

全世界に声を発信する、そんなことを行えるのか疑問であった。


一瞬、この声が聞こえたとき、俺は幻聴が聞こえたのかと思ったものだ。

しかしシャンパーニの塔に一緒にいた親方や仲間も同じ声を聞いた。


俺達は真実を確かめるため、カサーブやロマリアに赴いた。


街は騒然としていた。

あの不気味な声はシャンパーニの塔だけではなく

他の街にも届いていたのだ。


そして街の雰囲気だけではなく、大きく変わったのが魔物である。


今までも魔物はいたものの、

旅の間も昼間はほとんど遭遇することがなかったし

いてもたいしたことがなかった。


しかし最近は魔物の数が異常に増え、凶暴化し

昼でも人々を襲うようになった。

既にかなりの犠牲者が出ている。


そしてシャンパーニの塔に戻り、親方に呼び出されたのだ。


「おまえに確かめに行って欲しいものがある」


「なんだ」


「先日、ネクロゴンド大陸の南のテドンという村近くで

  不穏な動きがあるという話が入ってきた」


「どんなことだ」


「以前、おまえを雇った人体実験を目的とした組織があったと言ったが

  その組織の者がテドン近くで怪しげな儀式をしているらしい。

  情報を持ってきた者が瀕死の状態で帰り、死んでしもうた。

  確信が持てない情報じゃ」


「親方がずっと追っていた情報だな」


「そうじゃ。しかもその組織が実験から

  魔物を作りだすということもしているそうじゃ」


「魔物を作りだす?そんなこと可能なのか?

  もしかして今回の魔王の件と関係あるのか」


「わからん。

  今回の魔王と名乗る奴の仕業かもしれん。

  魔王と組織の人間が協力、もしくは利用されていることも考えられるし

  推測はいろいろたてられる」


「わかった、そいつを確認しに行けばよいんだな」


「できればワシやゼネテスも行きたいのじゃが…

  何よりワシがずっと追っていた件であるし、今回は危険であろう。

  しかし別件でワシはイシスに行かなければならん」


「イシスになんかあるのか?」


「集団の魔物によるイシスへ攻撃があったと情報が入った。

  魔王の手引きかもしれん。

  今後激化されることも考えられる。

  その場合はロマリアに援軍を頼むことも考えられる。

  手配などを行わなければならんのじゃ」


「そうか、わかった、親方気にするな」


「すまん。今回の任務は大変危険じゃ。

  何人か部下をつけさせる。

  それとこれを持っていけ」


俺は数本のナイフを手渡された。


「毒をしこんである。

  最悪組織のものと戦うこともありえる」


「人間を…殺すのか?」


「自分を守るためじゃ。

  殺らなければ、殺られることもある」


「…わかった」


第76話 雲隠れ

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