【第8話】
成長
犬の化け物を運良く倒した俺たちはさらに夜通し歩いた。
危険なのはわかっていたが、こんなところで休憩をするほうがもっと危険だと思った。
朝日が見えてきた頃、
「ねぇ・・・・ルーニ・・・もう歩けないよ・・・」
魔物に襲われたあとも、リュックはここまで文句も言わずにしっかりとついてきた。
しかし本当に限界だったんだろう。我慢と緊張の糸が切れたようだ。
「そうだな・・・・
夜通し歩いたからな。
俺も足がパンパンだ。
少し休憩するか・・・・
それに腹が減ってしょうがねぇ」
夜、魔物との戦いであんなにエグイところを見たがしかし飲まず食わずにも限界がある。
くすねた水筒に口をつけ水をふくんだあと、芋とリュックがゴミ箱から拾ってきたパンのミミのどっちを食おうかという話になったのだが、パンのミミを食うことにした。
芋を食ってもよかったのだが生では食べられないから火をおこす必要がある。火のおこし方は知っていたが焚き木も拾わなければいけないし火をおこすのも面倒だ。
俺たちはパンのミミと水を腹に押し込め軽い朝飯を食った。言葉少なげに飯を食っていると
「いったいどのくらいでノアニールっていうところにつくんだろうね」
とリュックがたずねてきた。
「わからないな。
この地図方角しかわからなねぇし。
1日でつくような距離なのか、
それとも何ヶ月もかかるようなところなのか。
何ヶ月もかかるようなところだったら
食料や水も調達しなければいけないよな」
「うん、そうだね。
でも・・・・」
「でも?」
「結構孤児院に配達屋が食料を配達にしてきていたじゃない?
だからそんなに遠くはないんじゃないかな」
「ほぉ・・・・確かにそうだな」
俺はリュックの答えに賛同したと同時にリュックの洞察力にも感心した。
体力もさほどないし、頼りないところもあるが、余分な食料のパンのミミを持ってきたり、俺が思いつかないようなことを考えてていたりして結構しっかりとしてやがる。それに、昨日までと違って、自信なさげにも答えなかった。
昨日魔物に襲われたときに、言ってやったのがよかったのかな。
何はともあれリュックは孤児院を出たときより1日でたくましくなったように感じた。
「じゃぁ、もう少し休んだら、がんばって歩こうぜ」
「うん」
リュックが言ったとおり、ノアニールの街はそれほどの距離がなかった。
あのあと魔物に出会うこともなく、近くの木陰で少し睡眠をとり一日だけ野宿をしたが、夕方くらいに遠くに大きな何かが見えた。
「おい、なんか見えるぞ!」
「きっと、ノアニールだよ!」
俺とリュックは疲れも忘れてノアニールに駆け出した。
第9話 初めての街ノアニール
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