【第163話】

もう一人のわたし


感情を一度は失いたいと思った。

悲しみたくないから・・・・・

でも、それは逃げること。

現実から、逃げることなんだ。

その悲しみを受け身でとるのではなく

それをなくそうとする努力をしなければ。

悲しみに対抗する力を持たなければ人はそれで終わってしまう。

そのことを知らせてくれたのは

もう一人の”わたし”だった。

そして”わたし”の存在が消えるとそこに重々しい声が響き渡った。


姿は見えない。声だけが聞こえる。

でも・・・・・・・落ち着く。

竜の女王と同じような包まれる雰囲気を感じさせる。

声は男の人だけれど・・・・・・

お父さんのこと、私には記憶にないけれど

きっと私が想像するお父さんの雰囲気に似ているんだ。

 

”人の子よ。人でありながら強い意志と勇気とそして優しさをもつものよ。

 よくぞ、試練を乗り越えた”

 

「これが試練だったのですか?」

 

今、話している相手はたぶん、天空界に属する方なのではないだろうか。

誰かはわからないが、私はそう答えた。

 

”そうだ。人間として大切な”心”

 それを見せてもらった。

 おまえに語りかけたものは、おまえの中で眠っている感情だ。

 その感情を呼び起こすことができなかったら、この”光の玉”は

 輝きを失ったままだっただろう”

 

「光の・・・・玉?」

 

”手を胸の前で組んでみるがいい”

 

言われたとおりにしてみる。

すると私の手のひらの中に暖かく・・・・

輝く物が・・・・・・・実体はないのだけれどあらわれた。

光の玉の出現ともに語りかけてきた声が小さくなってきた。

 

”光の玉は大魔王ゾーマの結界を破るもの。

 そしてそれは人の強い意志 と優しさを得て

 はじめてその輝きをあらわす。

 そう、おまえの”心”がゾーマを倒せる光なのだ・・・・・”

 

「私の心・・・・・・・・・・・」

 

”おまえがその気持ちをいつも忘れなければ、

 光の玉は輝きつづけ、きっとおまえを助けてくれるだろう・・・・”

 

もう声はほとんど聞こえない・・・・・

 

「ま、まってください!

 あなたは一体!」

 

”私は・・・・・・先ほどおまえがあった竜の女王の夫の魂。

 神竜・・・・・・」

 

声はそれっきり聞こえなくなってしまった。


10万人記念:第144話~第163話

第1部「海賊ミリー」編、

第2部「竜の女王、ゾーマの過去、そして・・・・・」編

楽しんでいただけたでしょうか?

 

第1部はミリーとの再会です。

親友と思っているミリー。

でも「親友」って何だろう。

友達より親しい存在だから、親友。

では”親友”の”親”という字、つまり”親しい”とはどういうことを言っているのだろうか。

たぶん、これって人によって価値観があるので違うと思います。

チェルトの場合は、お互い、強めあう仲という考えもあるようです。

 

本当はムーンのところも書こうと思ったのですが

カットしました。

(ムーンはもう出現させるつもりはなかったので

 書くとしたら、訪れたチェルトは実際にムーンと会うことができず・・・

 というストーリーを書くつもりだったんだんだけれど)

 

第2部「竜の女王、ゾーマの過去、そして・・・・・」編

ゲームの方では、ただ竜の女王から、光の玉をうけて、

それで終わってしまうんですけれど

完全オリジナルストーリー、作ってしまいました。

 

竜の女王とその夫である神竜。

そしてゾーマは”真”の平和を目的に力をあわせて・・・

というところです。

 

ここでのゾーマは”裏切りをする”完全な悪の存在です。

 

しかし、もともとゾーマは良い奴で、しかし神竜との

行き違いで(たとえば、竜の女王を取り合う、恋のエピソード)

からゾーマが悪になるストーリーも考えていました。

 

ただ、こうすると、ストーリーが、かなり複雑化されてしまううえ、

チェルトがこれからゾーマを倒すときに、迷うことになってしまうと思うんです。

 

やはり、ゾーマはドラクエ3では完全な悪であり、チェルトはそれを倒す、

シンプルですけれど、ストーリーを複雑化してしまうと読むのも大変になってしまうので

今後、これでストーリーも進めていきたいと思います。

(だから、”最初からゾーマは悪の存在”として扱いました)

 

この第2部で見てもらいたい点は2点で

竜の女王の気持ちを母を慕うように見るチェルト。

これが1つ。

 

もう1つは、光の玉の輝きを取り戻すもの。

それは、物という、形にあらわれるものではなく、

チェルトの”心”であり、人間としての”心”であり

これが”光そのものである”

 

この2点です。

 

今回のチェルトの冒険を読んで

あなたは何を感じたでしょうか?


第164話 心優しきホビット

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