【第201話】

魔王の影


強敵を倒した私とはぐりんの周りに

霧が立ちこめた。


その霧は通常の霧ではなく、赤い霧だった。

そう・・・・人の血のように・・・・




「なに、なに〜

 この変なのは〜〜!」


はぐりんも、ただならぬ雰囲気に驚いている。


「これは・・・・・幻影魔法マヌーサ?


 いや・・・・・これは・・・・・

 霧そのものから殺気を感じる・・・・」


赤い霧は、どうみても自然に発生されたものではなかった。


霧で姿を隠し、その中に敵がひそんでいるのか・・・・・・


それとも・・・・


「まさか・・・・・・

 この霧自体が魔物?」


”そのようなものだ”


私の声に答えるように

突然、人のしゃがれた声のようなものが聞こえてきた。


"貴様のようなものが、バラモスを倒したとはな・・・・"


ゾクッっとくるような低い声だ。


「お前は、ゾーマの手先!?」


私は実体のない声にそう叫ぶ。


”私は大魔王ゾーマ様の側近・・・・・

 魔王の影という名で呼ばれることが多いがな。


 どういうやつか・・・偵察に来たのだが・・・・・

 やはり、人間を見ると殺したくなってくる。

 
 ひ弱で、愚かな人間を見るとな・・・

 クックックッ・・・・”


私は、稲妻の剣を抜き放ち、相手の攻撃に対応できるようにする。

魔力を得た剣が、光り輝く。


先ほどの戦いで、体力をかなり使い、

さらにライデインで魔法力をかなり消耗し、

正直言ってこの状態で戦うのはつらいが、

泣き言は言ってられない。

こちらがやらなければやられてしまう。


”大魔王様には、まだ、おまえを殺さないようにと

 言っておいでおられたが

 まぁ、よいだろう。

 多少のおとがめはあるだろうが、

 何より人間を殺す瞬間というのは

 気持ちがよい・・・”


「・・・・・言いたいことがそれだけ?」


それが戦闘開始の合図だった。



第202話 イオナズン

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