【第212話】

暗闇の森


ラダトームでガライの話をきく。

彼の唄は、魔物をも惹きつけるという。

その噂が本当かどうかはわからない。

ただ、ガライという詩人は、そのおかげで

尊敬の対象だけというわけではないようだ。


私は、ラダトームを出て、北西にあると言われてる

ガライの家にいくことにした。

もちろん、伝説の武器と防具の話を聞くためだ。


平野をしばらく歩くと森にさしあたる。


「暗いねぇ・・・・・」


はぐりんが、その森を見てつぶやく。


「この森をこえないと、ガライに会えないわ。

 そこにガライがいるとは限らないけれど・・・・

 いこうか」


「うん」




本当は夜の森の中に入るほど、無謀なものはない。

魔物が気配を隠すに格好な場所だし、

戦いとして、動きにくく、夜ではまずまともに戦えないだろう。


しかし、ここは、ゾーマの巨大な魔力による闇のアレフガルド。

いくら待っても朝がくるわけでない。


私はたいまつに火をつけて森の中をすすんだ。


そのたいまつの炎を見て怖がる魔物もいるが、

逆に人間の匂いをかいて、襲いかかる魔物もいた。


見たことのない、魔物だ。

数が多い。


たいまつの火は消せないので、片手しか使えない。

その片手で剣を抜いて、戦うか、

盾でかばいながら、たいまつで、敵を追い払うか迷ったが、

それではジリ貧だと思い、剣を抜き放つ。


いざというときは、たいまつを消して、

盾をとって、戦うしかない。

暗闇で戦うのは自殺行為だが。


私は木を背にしながら、剣をかまえる。

これにより、背後からの攻撃は気にしないで戦える。

たいまつの火で魔物を威嚇する。


魔物達が襲いかかってきた。


「人を襲うのはおやめ!」


そのとき、突然、鋭い声が聞こえる。

魔物達はその声でとまる。


そのあと、きれいな竪琴の音色と、歌声が聞こえてきた。




第213話 種族を超えた唄

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