【第228話】

失われた記憶


サラマンダーとの激戦。

ドラゴンの咆哮の魔力により、すくむ私を救ってくれたのは

はぐりんの虹色の光だった。

束縛された私の心からはぐりんの光が私を守ってくれた。

そして、この世のすべてを溶かすサラマンダーの炎を

勇者の盾ははねのけてくれた。



勇者の盾とはぐりんの守りで、力を得た私は

再度跳躍して、サラマンダーに3撃目の攻撃を与えた。

ドラゴンの堅いうろこを突き破る。


しかし、まだ倒せない!

なんて、しぶといんだ!


サラマンダーは暴れ、あたりは地震がおきる。

暴れまわるドラゴンの尻尾に直撃をうけ、私はふっとばされる。


うっ・・・・・・

これは・・・・・・また・・・肋骨が折れたな・・・・


意識を失いかけそうになりながらも

すぐに、お腹に手をあてて、ベホマをかけて、立ち上がる。


何度でも立ち上がってやる。

不思議なことに、くじける心が出てこない。

いくらでも立ち上がって立ち向かっていけると思える。


これも勇者の盾の力なの?


私は、何度も立ち上がり、

4度、5度、サラマンダーに稲妻の剣をその鱗に埋め込んだ。


次第に・・・・サラマンダーも弱まり・・・・・



辺りは凄惨な光景だった。


サラマンダーの血みどろの死体。


その血の池に私とはぐりんが埋もれている。


はぐりんは、虹色の光を出した後、

放心状態で目をあけている。


私のほうも、サラマンダーを倒したと同時に

今までの激戦の疲れがおそいかかり、動けない。


どうにか命拾いをした。

勇者の盾を手に入れた。


しかし、この戦いのあとに起こる虚しさは何だろう。


本当にこれでよかったのだろうか。


ここにいた魔物たちは、本当に魔王の配下だったのだろうか。

考えても仕方のないことが頭をよぎる。

 

大魔王ゾーマを倒すために、勇者の盾を手に入れる・・・

しかし、その代償として、また多くの命を奪ってしまった。


本当にこれでよかったのだろうか・・・・・


はぐりんに目をむける。


「はぐりん・・・・大丈夫?」


「・・・・・・うん・・・・・・・」


言いようのない気分を紛らわせるためもあって、

私ははぐりんに再び声をかける。


「はぐりん・・・・・すごかったね・・・・

 あんな、はぐりん、初めて見たよ。

 はぐりんがいなかったら・・・・・

 きっと、今回・・・・勝てなかったかも・・・・」


はぐりんに感謝の意を述べていると同時に

1つの疑問を思い浮かべた。


もしかしたら・・・・・以前、魔王の影と戦ってくれた時に

助けてくれた・・・・・それもはぐりんなのかも・・・・


「・・・・・・ある・・・・・・」


「え?

 どうしたの?

 聞こえなかった」


「ボク・・・・・・ここに来たことがある・・・・」


「何言ってるの・・・・はぐりん?」


私ははぐりんの言っていることがわからなかった。


「この魔王の爪あとにきたことがあるの?」


「ううん・・・・・そういうことじゃない・・・・

 ただ・・・・・・ボク、以前アレフガルドにきたことがある・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・どういう・・・・・こと?」



恒例のあとがきです。


第207話から第228話の長編

「勇者の盾編」はどうだったでしょうか?


魔王の影との戦いが終わり、

はぐりんに秘密(207話)を少しふれたあと、

力の盾(208話~209話)、ガライのお話(210話~217話)により、沈黙の洞窟に向かい、

トロルキング、ヒドラ、サラマンダー(218話~226話)との戦いの末、

そして勇者の盾へと話しをつなげ、再度はぐりんの謎(227話~228話)で話をしめてみました。


ガライのところは、もっとたくさん書きたかったのですが、

うまく文章をつなげることができなくて、

書きたいうちの半分しか書けませんでした。


魔物であれ、何であれ、生き物はみな平等の命ということを

伝えたかったのですが、これにもう1つ、

動物も"植物"も同じ命というテーマを描きたかったのですが

これがかけませんでした。


"植物"を題材にしたテーマの作品が描けなかったっていうのかな?

ちょっと残念です。

(第214話の「木々を傷つけて欲しくなかったから・・・」という

ガライの言葉でしか伝えられなかったですね。)


そして、はぐりんの素性に関して、1話だけ、

主人公をガライにして、ガライの視点から書いてみて、

そして、沈黙の洞窟へ入るチェルト。


今回は、バトルシーンが一番長かったですね。


魔法が通じないところで、力の盾を使い、

トロルキング、ヒドラと戦い、 どうにか生き延びる。


そして、最下層でのサラマンダーとの戦いと敗北、

再戦して、はぐりんと勇者の盾の力により勝つが

戦いへの虚しさを同時に感じるチェルト、

 

その虚しさを紛らわせるためにはぐりんに声をかけるが、

はぐりんが、いてつく波動を発したことにより、

失われた記憶の1つを思い出す・・・・

そういう感じで作品を書いて見ました。


そろそろ
「はぐりん編」も近づいてきましたね。

99話以降、はぐりんを登場させた時から描きたかった作品で

バラモスの前から構想が固まっていました。

そのストーリーのはぐりんの秘密を

そろそろ描くつもりなのですが・・・・・

これを文章でどこまでうまく表現できるかな?

 

それと、こちらは余談ですが、みなさん、チェルトの絵を

いっぱい送っていただきありがとうございます。

 

いまやチェルト美術館には、30枚以上のチェルトの絵があり、

みなさんがチェルトの絵を送っていただけることと

チェルトの感想をいただけることが

何より楽しみでパステル・ミディリンを運営しております(^^)


第229話 時を待って

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