【第232話】

お湯の文化


はぐりんがものめずらしそうに温泉を見ている。

それはそうだろう。

ネクロゴンド育ちのはぐりんにとっては

何もかもが新しい体験なのだろうが、

とくにこの温泉は目をひかれたらしい。


はぐりんは、疑問に思ったことを次々と

私に質問をあびせかけた。



「ちょ、ちょっとまちなさい!」


「ねぇ、なんで〜」


はぐりんは、疑問があるとすぐに口に出す子だ。


「お湯っていうのは、そうねぇ・・・・

 たとえば、水をそのまま飲むと人間は体を壊してしまうのね。

 だから、お湯にすると、消毒の効果があるっていうのかなぁ・・・」


「そうなんだ、ボクなんか、

 水たまりの水を飲んでも全然平気なんだけれどな〜」


火を使う生物というのは、知能がある。

人間が、道具を使って起こすか

もしくは呪文が使える人間や、魔物達くらいしかつかわないものね。


そう思うと、人間は、火というものを使うことで

いろいろな文化を手に入れてきたが、

それにより体自身は他のどの生物よりも弱いものになったのかもしれない。


「それと、あの泉にはいっている人がいるのは、

 人間にはお風呂っていう文化があるのね」


温泉を見ると、ご老人がのんびりと温泉につかっている。

きっと、共同浴場なのだろう。


「水にそのまま、入ると冷たいでしょ?

 だから、暖かいお湯に入るわけ。


 お湯に色がついているのは、

 いろいろな成分がはいっているのね。


 お湯に入って、さらに、温泉に入ると

 人間の体にはとてもいいものなのよ」


「へぇ〜そうなんだ〜

 チェルトは本当に物知りだなぁ〜」


かなり強引だったが、なんとかはぐりんを納得させられたようだ。


「ボクも温泉はいったら、体にいいのかなぁ〜」


「さぁ、どうなのかしらね」


はぐりんの体は液体だけれど、

油のように水をはじくので、

はぐりんは、水浴びなども行うことができる。

温泉にも入れるのかもね。


「ねえ、私達も温泉に入ってみようか?」


「うん!」



第233話 戦士の休息

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