【第308話】

つぶやき


竪琴の名手ガライさんもこの軍船に乗っていた。

ラダトームの王がガライさんの力を見込んで

海の魔王を抑えるため頼んだそうだ。

このことから王は海の魔王を倒そうとしているわけでなく、

無事、ルビス様を救うことが第一だということがわかったので

王の人柄に少し惹かれるものがあった。




あれから海の魔物がたびたび襲ってきたが、

トヘロスの魔法が船を守ってくれた。

おかげでこちらは一人も傷つくことがなく、

順調な航海が続いていた。


船が出航していたときは不安で寡黙な人たちが多かったが

今は甲板の上は、にぎやかになっている。


「このまま海の魔王もはじいてくれればいいんだがな」


「あぁ、この調子なら海の魔王だって

 この船には手が出せないんじゃないか?」


そんな話が聞こえてきた。


仮にも魔王と呼ばれている存在だ。

トヘロスが通用する相手とは思えないが。

魔王であれば、バラモスと同等の力があるのではと私は思っている。


「まぁ、でもできれば、海の魔王とは戦いたくないな」


「あぁ、一度お目にかかりたい気もするが

 奴に遭遇して生きて帰ってきた者がいないからな。

 やっぱり命だけは捨てたくはないからな」


まったく同感ね。

私もできれば、このまま上陸してルビスの塔に突入したいくらい。

六百人の人数でその倍以上の魔物達がいる塔を攻略できるのは、至難だけれど、

それでも、力をあわせればなんとかなるかもしれない。

危ないと思ったときはリレミトとルーラで脱出すればよい。

もっとも沈黙の洞窟同様、魔法が使えなかったら話は別だけれど。


私は海の魔王と会って戦わざるを得ない場合、

そしてルビスの塔に入ったときにどのように

みんなの力を最大限に使って戦えるかを考えた。


「でもなぁ・・・・・」


と私は一人でつぶやいた。


「どうしたの?」


突然つぶやいた私に肩でウトウトしていた

はぐりんが目を覚ました。


「あ・・・うん、何でもないの」


「そう」


そういうとはぐりんはまたウトウトして眠ってしまった。


はぁ・・・・

メルキド大戦を経験して、戦というものを経験して

人の上に立つということはどういうことであるかを認識はしたが、

兵をどうやって割りふって戦えるとか考えるなんて

普通に考えたらやっぱり、18の女の子が考えることじゃないよ。


私はそれをあたりまえのように、そんなことを考えていることに

ため息をついた。


第309話 悪魔の島

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