【第330話】

冒険者の叫び


三階に登ると、一階同様暗闇が支配していた。

そして冒険者と魔物の死体。

突然、遠くから聞こえてきた叫び声。

それから金属音と衝撃音も響き渡る。




暗闇のどこをどう走ったかわからなかったが

とにかく私は音がする方へ走った。

だんだんと音が近くなってくる。

そして、一つの部屋につきあたった。

この中から聞こえてくる!

私は扉を蹴破った。


扉をあけた瞬間、私の目の前が炎の柱が立ちはだかった。

全身火だるまと化した人が立っていた。

肉がやけるイヤな臭い。

そして目の前で崩れ落ちていった。


暗闇の部屋からは激しい戦いの音と叫び声が聞こえる。


”ギャァアア!!!!”


また部屋のどこかで人間の叫び声が聞こえた。

また一人やられた。


”助けてくれ!!!!”


そう言って新たな叫び声。そして、それがかき消された。


”ウワァア!!!”


また一人。


次々とこの暗闇の部屋で冒険者が魔物の餌食になっているのは

一目瞭然だった。


私にも、魔物が襲ってきた。

松明を放り捨て剣と盾をかまえる。

火はすぐに消えてしまった。

再度辺りは暗闇に包まれ、

魔物の強靭な爪、牙、そして魔法が次々と襲ってきた。

私は勇者の盾と雷神の鎧で身を守りながら

その場から動かず、気配だけで剣を振るった。

敵が私に振れる寸前に、剣の軌跡が敵を捕らえる。

一振りするごとに確実に一匹ずつしとめていった。

しかしあちこちから悲鳴が聞こえたが、敵の数が多すぎて助ける余裕までなかった。

七匹目まで倒したことを数えていたが

そのあとはわからない。

私は敵が全滅するまで剣を振るい続けた。




「はぁ・・・・はぁ・・・・・」


肩で息をした。

静かになったの部屋では私の荒い息使いだけが聞こえる。

何も見えない暗闇。

だが、辺りは吐き気がするような血の臭いが立ちこめていた。


二十体以上の魔物を葬った。

だがこの部屋には二十人近くの冒険者がいたようだが、

全員殺されてしまったようだ・・・・

私は生存者がいるか声を出したが、

誰一人呼びかけに声を出すものはいない。

ただの一人さえ・・・・・・救うことができなかった。


第331話 二本の松明

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