【第340話】

決断


塔の五階の内側に着いた私。

そこには三百匹は超えるであろう魔物の大群が待ち構えていた。

私はすぐに階段から首から引っ込めた。




「ちょっと・・・・・なによ・・・・これは・・・・・」


私はあまりの敵の数に震えた。

とりあえずまだ魔物達には気がつかれてないようなので

四階に降りて、気を落ち着かせた。


魔物の数が半端じゃない。

目測で三百、いや、もっといる。


メルキド大戦時に聞いた話、

大魔王は魔物達の軍をラダトーム、メルキド、ルビスの塔の三つに割ったということが本当であれば

今まで倒してきた魔物はこの塔のほんの一部に過ぎなかったってことだ。


その残りの魔物達がここに集結していた。

六階に行くにはたぶんこの部屋を通らなければいけないのだろう。

だがあれだけの魔物をやり過ごすことはできない。


あの魔物を相手にすることは考えたくなかった。

メルキド大戦のように助けてくれる仲間、

今回はまったく仲間がいないのだ。


どうする・・・一度退却をするか?

ここまでの道のりはマッピングで掲載されている。

次に来るときは、塔の中はもう少し楽にいけるはずだ。

脱出はリレミトの魔法でいつでもできる。


しかし再度この塔に来た時、塔の上空から降りないといけないのに

どうやってもう一度来る?

ロープを張って五階から下るか?

それは危険だ。落下中に翼があるモンスターに襲われる可能性もある。


私は再度ここへ来るという考えを打ち消した。


それにこの塔の中の攻略法を思いついたとしても、ここまで来る道のりが大変だ。


一度来た場所に移動することができるルーラは

人間によって作られた建造物などはっきりとイメージがあれば移動が可能だが

ここは森に囲まれた塔で、イメージも漠然としているし

流れ着いたところで土地勘がないところへのルーラは失敗することもある。

それに大勢の人を運ぶことができない。せいぜい4,5人だろう。


では、船路では・・・・いやこれもダメだ。

最高の準備をラダトームでしてきて、六百人の人間がラダトームを出発しても

結局私一人しかここにたどり着かなかったのだ。


まだ戻ったとしても健在であろうクラーゴンに阻まれるに違いない。

仮にそこを抜けたとしても、マッピングしてある地図があるとはいえ

この塔をもう一回攻略をしなければいけないのは変わらず

イタズラに犠牲者を増やすだけなのだ。


「やるしかないのか・・・・・」


私はため息をついた。

大量の魔物の命を奪うのもイヤだし、

自分が生き残れる保障もなかったので気分は重かった。


しかしそれしかない。やるしかない。

私は立ち上がった。

今考えられる最良の戦い方を考えるだけだ。


否定的なことを考えても何も生まない。


もし魔物が襲ってきたとして、自分が素手だったとき

そこで「自分がナイフを持っていれば戦えるのに」

と思うのは愚かなことだと私は思う。

襲われた時にそんなことを考えたら、命を失うことになるだろう。


ないものねだりをしても仕方ないのだ。

その時は自分が用いる手持ちの武器と知恵で立ち向かうしかない。

自分が持っている手持ちのカードで戦うしかない。


人間が魔物に唯一勝っている知恵を振り絞って戦う、

それが戦いで生き残る方法だ。


私は一人で三百体以上の魔物をどう渡り合えるかを考えた。



第341話 魔法の種と実

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