【第361話】 はぐりんが語るスライムの歴史5
はぐりんはいろいろなスライムの歴史を話してくれた。はぐりんの話は我々人間が知ることのない貴重な話だった。
「スライムも人間と同じね。 自分が生きていくために必死になって 生きる道を見つけて…
でもさ、肝心のはぐれメタルの話が出てないわ。 はぐれメタルはどうやってスライムの種族から変化したの? メタルスライムと同じ、バブルスライムがミスリルに包まれたのかしら。 そもそもバブルスライムとスライムって同じ種族から派生して生まれたのかな?」
四方に散ったスライムで東に向かったのは一番小さな集団だった。
険しい山がそびえ立ち、不気味な黒雲が立ちこめている。 真っ黒な地面で、草は一本も生えていない。
あるのは灰色の枯れ木のみ。
普段は陽気なスライム達もこの様子に顔(体?)をしかめた。
「こんなところに食べ物あるのかなぁ…」
しかしここまで来て引き返すことはできない。 スライム達はさらに進むことにした。
そうするとそのうち、変な臭いがしてきた。
「くさい!くさい!」
「鼻がまがっちゃうよ〜」
「ボク達に鼻なんてあるの?」
臭いがする方向に小さいスライムの群れが進んでいくと ぷくぷくと泡立つ緑色の沼地が見えた。
その沼地から臭いがするようだった。
「うわ〜!!! なんて臭いだ…」
「こんなところ、早く立ち去ろう!」
スライムが、沼地に関する不満を言って立ち去ろうとしていたときだった。
「ひでぇなぁ、こんなに心地よいところを臭いなんて」
「あぁ…まったくだ。ここは極楽だぜ」
その緑色の沼地に、腐った死体達がお風呂につかるように 沼地に使って休んでいたのだ。
「えぇ!!!」
「これが…心地よいの?」
小さなスライム達は腐った死体の言葉を聞き、興味を持ち始めた。
「あぁ、体のシンから温まるって感じだな」
「それに体が丈夫になる」
「そうなんですか〜〜」
スライム達は腐った死体の言葉に関心を持ったようだった。
「もう、どのくらいここにいるんですか?」
「10日くらいかな」
「ここにいると体が丈夫になるだけじゃなく、腹もすかない」
「いいことづくめだ」
「えぇ!!!!
お腹がすかないの!?」
食料を求める旅を続けていたスライム達には この言葉は魅力的だった。
「じゃぁ、ボク達も入ろう!」
そういうと次々とスライム達はその沼地に飛びこんだ。
「うげぇええぇ!!!」
「気持ち悪い!!!!!」
「苦しいよぉぉ!!」
その沼地は毒の沼地だったのだ。 自ら毒の沼地に体を入れるのは自殺行為のようなものだった。
「ボク達に嘘をついたな!!!」
「嘘なんかついてないよ」
腐った死体は、スライム達に嘘をついたわけではなく 彼らにとっては本当に毒の沼地が極楽で薬であり、
腐った死体から毒々ゾンビになるために沼地につかっており 好意でスライム達に話したのだ。
「それは、お前らの根性が足りないからだ。
ここの環境に慣れるにはもっと体の奥まで染み込ませないとダメだな。
もっと沼のエキスを吸わなきゃ」
「沼のエキスを吸うの?」
その言葉を聞いて、スライム達は目をつぶりながら 鼻から沼をすいこんだ。
「ぎぁああああぁ!!!」
「くさいくさい!!!」
「余計に気持ち悪くなった!!!!」
スライム達はさらにうめき声をだし、 ついには毒の沼地が体にあわず、次々とスライム達は破裂してしまった。
「あぁあ、しょうがねぇなぁ」
それを見た腐った死体は、あきれたようだった。
しかしスライム達は体を破裂しても命を失わなかった。
「わぁ〜ん、体が破裂しちゃったよぉおぉ〜」
「あれ? でもなんだか、苦しくない。体が楽になったぞ!」
毒の沼地のエキスを体に染み込んだスライム達は その原型からはほど遠くなり、沼地と同じ毒々しい緑色になったけれど
沼地のエキスを体の隅々までとりこんだスライム達は
毒の沼地でも生きていけるようになったんだ。
彼らは後にバブルスライムと呼ばれるようになったんだね。
第362話 はぐりんが語るスライムの歴史6
前ページ:第360話 「はぐりんが語るスライムの歴史4」に戻ります
目次に戻ります
ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります