【第6話】

のらちゃん


30分くらい、歩いたんじゃないだろうか。

荷物が重いせいもあって、気が遠くなる距離だった。

しかし、ライトアップされた広島城は、

そんな疲れを忘れさせるくらいきれいだった・・・・・・・・・



「きれいね・・・・・・・」


「ほんと・・・・・・・・」


広島城の近くに公園があり、そこで、荷物を下ろし、私たちは、見上げている。


10時過ぎと言うこともあって、車や人の姿はほとんどなく、

お城のライトアップとお堀の水の幻想的な光景は私たちを感動させてくれた。


「来て・・・・・・よかったな・・・・・」


「うん・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・あれ、ムーンは?」


「ん・・・・・・・・さっき、いたぞ」


「・・・・あれじゃない?」


「なにやっているんだ、あいつは?」


「ムーン!」



「えへへ・・・・・・犬、拾って来ちゃった・・・・・・」


ムーンの隣にくっついているのは、茶色い毛がふさふさしている

かわいらしい犬。 でも、首輪ついていないから、きっと野良犬ね。


「なんか、ずいぶん、ムーンになついているな」


「さっき、カロリーメイトあげたの」


「え!?」


「餌をあげちゃ、だめよ」


「なんで?」


「だって、ずっとついて来ちゃうじゃない」


「う~ん・・・・・・・でもかわいそうなんだもん・・・・・・」


「まぁ・・・・・気持ちは分からないでもないが・・・・・・

 俺達は、明日この街を出るんだぜ」


「ねぇ、お願い、今日、一日だけ!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「どうする?」


「・・・・・・・・・・・

 ふぅ・・・・・・・・・仕方ないな・・・・・・・・・」


「じゃあ、いいの?」


「今日だけだぞ」


「うん!」


・・・・・・・まぁ、このきれいで感動的なお城より

動物に目がいくというのも、ムーンらしいよね・・・・・・・


第7話 「亡霊の夜」

第5話「目指せ広島城!」に戻ります

目次に戻ります

パステル・ミディリンのトップページに戻ります!