おそらく第十五日目

  今までいろいろあって書けなかったけれど、ようやく落ち着いた。どうにかあの 地獄から脱出して、今は海辺の修道院にいる。

最後に書いた次の日、第十日目の朝起きて仕事場へ向かうと、マリアさんが見張 りの足に石を落としたとかで鞭で打たれていた。しかしみんなそれを放心したよ うにぼんやり見つめている。あまりの事にヘンリーが我慢できなくなって、見張 りに飛び掛かり、僕もそれに加勢した。見張りは思ったより弱かったので簡単に 打ち倒したけれど、すぐに小隊がやってきて、小隊長の命令ですぐに取り押さえ られてしまった。僕らはそのまま牢に放り込まれたが、マリアさんは手当てを受 けにどこかへ連れて行かれた。そのとき、あれがマリアさんのお兄さんだと確信 した。

しばらくして、僕らの牢が開けられ、マリアさんとあの小隊長(ヨシュアと名乗 った)がやってきた。死体を流す水道から、僕らを樽に乗せて送り出すと言う。 一緒に逃げようと誘ったけれども、ヨシュアさんはそんなに乗りきれないからと 言って断った。私はここに残って、もっと多くの人を逃がせる機会を待つ、と言 っていた。
本当にそんな機会がくるのか、それを信じているのかと聞くと、彼は無言で樽の ふたを閉じた。

ガコンと音がして、樽が流れはじめた。だから、僕ら水路を開けた時のヨシュア さんの最後の顔を見ていない。
樽の中で僕らはほとんどしゃべらなかった。


気がついたら、この修道院にいた。目が覚めるとベッドに寝ていて、修道女の人 が横に立っていた。話を聞くと3日間も眠りっぱなしだったらしい。
今日は薬草をあてたりして一日療養に過ごす。二人は僕より回復が早いようだ。
これからの事は明日考える。今日はもう眠る。


次のページへ
表紙へ
パステル・ミディリンのトップページに戻ります