六月十三日

院長は流れ者たちの噂で妖精について知ったようだ。やはりサラボナのあたりが 妖精の話が多いらしい。確かな話では無いけれども、サラボナの東から妖精の村 に行けるという。 そこにあるのか、そこから通じているのかはともかく、いったんサラボナに行っ てみよう。




六月十五日

今日一日はサラボナどころか世界にとっても大変な日だった。

ルドマンさんのご先祖が封じた150年前の巨大な魔物が蘇って、サラボナの町までやってきた。
幸いルドマンさんが見張りの塔を建てて周到な準備をしていたのと、僕らの戦い で魔物は町人が知ることなく倒されたものの、激しい戦いだった。

精根尽きるまで呪文を投げかけ、天に届くかと思われるような激しい炎の息をか わしては肉迫して斬りつける。どうにか倒したけれども、ルドマンさんの家で手 当てを受けている。

ルドマンさんはあれを自分の責任で封じるつもりだったらしい。もし自分の力が 及ばないとなれば一族、いや町人すべての力を借りてでもあれを倒すつもりの、 悲壮な覚悟だったのだろう。僕らがすでに倒してしまったことに、はじめはきょ とんとしていた。


ルドマンさんは実利的な性格で、妖精のことにはあまり興味もなく、知識もほと んど持っていないようだ。ただ幼い頃に、東の方角に関して、禁忌かなにかのお とぎばなしを聞いた覚えがあるという。
サラボナは古くから続いているものの、ルドマンさんの代になってだんだんと町 の性格が変わってしまったらしい。妖精の詳しい伝説を知っているものはわずか になってしまった。


とりあえず明日からいったん、そらとぶ絨毯で東の方をまわってみようと思う。


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