【第6話】

水着


「これで来客は全員かい?」

 クッキーをつまみながら美樹本さんがキヨさんに尋ねた。

「いえ、あと正岡慎太郎様という方が来られる予定です。たぶん最終便で乗ってこられるのではないかと思いますが・・・」

「おい、そんなことより、招待主の我孫子氏はどうした!?」

 不機嫌顔を隠そうともしない村上さんはさらに言葉を続けた。

「次のゲーム企画の作曲を担当してほしいと知らせをうけたから私はこんな辺境の地まできたんだ」

 この村上さんという人、かなり怒りやすく自己中心の人のようだ。今、応接間にいるシュプールの宿泊客だった人が温和な人が多いだけに余計に村上さんの性格が目立った。

「はい・・・・それが主人からは先ほど連絡がありまして至急の用ができたらしく、最後の船の便で来るとの知らせをうけました。なので、もうすぐ来ると思うのですが・・・・本当に申し訳有りません・・・」

 キヨさんは自分のせいではないのに本当に申し訳なさそうに何度も何度も頭を下げた。

「フン・・・・・」

 村上さんは面白くなさそうに顔を背けた。

「まぁ、そんなに怒りなさんな。どや、後で酒でも飲まんか。作曲のことについてでも聞かしてえな。こう見えてもわしゃ、CD出しているんや。曲にはうるさいで」

「あ?・・・あぁ・・・・そうですな」

 香山さんの突然の申し出に驚いた村上さんは曖昧な返事をした。さすがに自分より年上らしい香山さんに憮然とした態度をむけるわけにもいかないらしい。それに香山さんは初対面の相手でも誰とでもうちとけることができる。ぼくはシュプールで気がつかなかった香山さんの魅力がなんだか少しわかった気がする。

「香山さん、CDなんて発売していたんですか!?」

 ぼくは驚いて聞いてしまった。

「そうや、わいの歌声はしぶいで。”部屋とYシャツと香山誠一”っていうCD出しているんや。なんなら後で聞かせたる。しびれるで」

「はぁ・・・・」

 どこかで昔聞いた曲名のぱくりのような気もした。

「では、わたくしは厨房のほうで夕食の用意をします。二時間くらいでできあがるかと思いますので、それまでどうぞおくつろぎくださいませ」

 キヨさんはそういって応接間から出ていった。

「真理、ぼく達はどうしようか。海にでもいく?」

「そうね。でもさっき海見たし山のほうに行かない?」

「そうだなぁ・・・・・・」

 しかしぼくとしては海に行きたかった。どうしても行きたかった。どうしてもどうしても海に行きたかった。真理を海に連れて行きたかった。真理の水着姿をどうしても見たかった。スケベって言うな。

「でも、せっかく水着買ったんだろ?着ないともったいなくない?」

 ぼくは真理をなんとか海に連れていこうと粘った。

「透?」

「い、いや・・・・・」

 下心を見透かされたかのように真理がにらむようにぼくを見ている。

「・・・・・・・しょうがないなぁ・・・・・・」

「え?」

「さっき泳ぐっていったもんね。海いこうか」


 やほおぉ〜ォ〜!!!!


 神様、ぼくは幸せです。真理の水着姿が見られるなんて!

 ぼくは手を組んで上を見上げ神に祈りをささげた。その姿を応接間のみんなは不思議そうに見つめていた。



 30分後、目の前には、海岸で白い水着を着ている真理の姿があった。

 もう・・・・死んでもいい・・・・いいっ!絶対にいいっっ!真理の白い水着から白い肌が見え容姿は人魚のようだ。もうぼくには何もいりません。

 海岸にはぼくと真理、それにみどりさんとアニキ、いや俊夫さんと可菜子ちゃん、啓子ちゃんの6人で来た。可菜子ちゃんのハイレグもこれまたすごく、抜群のプロポーションを惜しげもなくさらしていた。啓子ちゃんのぽっちゃり型だが、水玉模様の水着がとてもかわいらしい。みどりさんは黄色の食い込むような水着で、こ、これもすごい・・・・。海岸で水着姿の女性陣4人が遊んでいる姿をぼくと俊夫さんは眺めていた。

「透君」

「はい」

「やっぱり・・・・・夏はいいね」

「・・・・・いいですね」

「やっぱり・・・・海だよね」

「・・・・海ですよね」

「やっぱり・・・・水着だよね」

「・・・・水着ですよね」

「透君、鼻血出てるよ」

「俊夫さんも鼻血出てますよ」

「来てよかったね」

「ものすごくよかったですね」

「いい夢みられそうだ」

「目に焼きつけておきましょう」

 ぼくと俊夫さんはこの1時間ずっと海岸に座って鼻血を出しながら人魚達の舞に見とれていた。


第7話 電話

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