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朝に上海の広場で健康体操の簡化太極拳をしている人々
太極拳の健康効果は以前より知られていたが、必ずしも万人が習得することのできる平易なものではなかった。中国政府は第2次世界大戦後、伝統拳の健康増進効果はそのままに、誰にでも学ぶことのできる新しい太極拳を意図し、国家体育運動委員会が著名な武術家に命じて套路を編纂、普及に努めた。これを伝統拳に対して「制定拳」と呼ぶ。制定拳は楊式太極拳大架式をベースにして重複動作を避け、難度の高い動作を簡略化しつつ、太極拳のエッセンスをまとめたものである。套路毎に動作の数が違うため、各套路は「二十四式」のように動作の数で呼ばれることが多い。
簡化太極拳(二十四式太極拳)
簡化太極拳は最初の制定拳として1956年に発表された。楊式太極拳の主要な二十四の動作から構成されており、そのため「二十四式太極拳」とも呼ばれる。中国の学校では日本のラジオ体操と同じように生徒全員に教えられる。動作の覚えやすさと教えやすさに重点が置かれ、健康面でも武術面でも本質を伝えにくいなど伝統的な太極拳家の間では不評であるが、外国でもジムなどでヨーガなどと一緒に教えられることが多く、全世界で練習され、健康運動としての太極拳の普及に大きく貢献している。日本の太極拳教室で健康のために教えているものはほとんどの場合、この簡化太極拳である。楊式を基礎としているので本格的な楊式の入門用の套路として教えられることもある。普及に伴って集体(グループ)表演や競技会が盛んに催されるようになり、簡化太極拳は結果的に、表演武術としての側面を太極拳に持たせることになった。太極拳とは健康運動、ひいては武術にあらずとの認識を広める一因としての批判が伝統拳の間に多い。
八十八式太極拳
二十四式太極拳に続いて、1957年に発表された。二十四式に適用した原理に基づいて楊式太極拳の動作を改めたもので、二十四式と同質性があり、二十四式の既習者には学びやすい套路である。拳式の順序は伝統的な楊式太極拳大架式に準じているが、動作原理が違うことや、李玉琳伝の楊式太極拳に基づいていることにより、一般に行われている楊式太極拳と動作に少なからず差異がある。
四十八式太極拳
二十四式太極拳の上級套路として、1979年に発表された。二十四式、八十八式とは異なって、楊式太極拳をベースにしながらも、陳式、呉式、孫式の動作を取り入れた、初めての総合太極拳である。二十四式より難度は高く、八十八式より表演時間は短く、動作が左右対称に整えられた総合套路であったため、一般に普及しただけでなく、競技会においても頻繁に行われる套路となった。
総合太極拳(四十二式太極拳)
80年代後半、太極拳の国際大会が催されるようになると、競技会用の套路が要望されるようになった。競技者自らが構成した「自選套路」では、優劣を判定することが難しいことが生じるからである。そこで陳氏、楊式、呉式、孫式の競賽套路、総合套路、遅れて武式の競賽套路が発表された。日本では「競賽」という語に馴染みがないため、競賽套路は「規定套路」あるいは「競技套路」などと呼ばれるのが普通である。こうして発表された総合套路が「総合太極拳」であり、動作の数から「四十二式太極拳」とも言われる。
総合太極拳は、四十八式と同様に楊式太極拳をベースにして、陳氏、呉式、孫式の動作を組み合わせて創られた套路である。四十八式よりも各門派の特徴的動作を明確に演ずることが出来、内外の競技会種目として採用されている。見栄えのする套路なので、中国では一般にも人気が高い。その一方で、競技性を念頭に置いて伝統拳の動作をつなぎ合わせたので、「連続性が悪くぎごちないところがある」「健康効果に比して身体への負担が大きい」などの批判もある。 
太極剣(三十二式太極剣、総合太極剣)
制定拳を行う者が器械入門として行えるよう、楊式太極剣をもとに編纂された套路が「三十二式太極剣」である。さらに競技用套路として、陳式、楊式、呉式の動作を組み合わせた「四十二式太極剣」(総合太極剣)があり、総合太極拳と並んで競技会で盛んに行われている。
制定拳は、「太極拳の(世界的)普及」(伝統文化としての太極拳)と「国民の健康増進」(保健手段としての太極拳)が当初の目的であったが、現在は「運動競技としての太極拳」の占める比重が大きくなっている。しかし、制定拳の武術的意味が再考されたり、健康効果を考慮した総合太極拳(三十二式太極拳)が編まれるなど新たな動きも見られ、今後の動向にも注目していく必要がある。

記事元:Wikipediaより引用