【第135話】
甘え
家に帰ってきた。
お城には明日顔を出すことにした。
このくらいのわがまま、許されるよね。
今日はお母さんにいっぱい甘えるんだもん。
と思っていたんだけれど、さっきから客がとだえない。
私がアリアハンに帰ったことが広まり
アリアハン中の人が、うちにくる。
まぁ、わかるけれどね・・・・・
今日くらいは家でゆっくりしたいのに・・・・・
結局、みんなを相手して、お客さんが帰ったときは深夜遅くになっていた。
「はぁ・・・・・・・・疲れたぁ・・・・・・・
家にいるときくらい、ゆっくりさせてよぉ・・・・・・」
ついつい、愚痴ってしまった。
「ねぇ〜〜おかぁさ〜ん〜〜
お腹すいたぁ〜〜
なんかつくってよぉ〜〜〜」
「まったく・・・・・・・・この子は・・・・・・・」
そういう母さんもにこにこしながら台所で料理を作っている。
久々に家に帰った娘に甘えられて悪い気しないもんね。
ほんとうは、私が帰ったときのために
お母さんがいっぱい料理、作ってくれていたんだけれど、
お客さんにみんな出しちゃったので何にもないの。
「お〜な〜か〜す〜い〜たぁ〜〜」
それに、ずっと他の人の相手をしていたから、
家に帰ってからまたお母さんとほとんど話していなかった。
ご飯を食べて、やっとお母さんと二人きりになった。
(正確にははぐりんも床でご飯を食べている。
街の人にはぐりんを紹介するのはまずいと思ったけれど
お母さんには紹介した。
でも、さすがにわたしのお母さん、肝っ玉が座っている・・・・・・
全然、びっくりしなかった)
「ねぇ・・・・・・・お母さん・・・・・・・」
「ん?」
「今度さぁ・・・・・・・料理教えてよ」
「なによ、突然・・・・・・・・」
「料理の一つくらい作れた方がいいかなぁ・・・・・・・と思って」
「まぁ・・・・・・・・・一応、女の子だからね」
「一応じゃないもぉ〜〜ん。
れっきとした女の子です!」
「どういう風の吹き回し?」
「わたしも・・・・・・
そろそろ、女の子っぽくしようかなぁ・・・・・なんて」
もう、旅に出ることもあまりないし、一度、ムーンやミリーに会った後
これからしばらくは平凡な日々を家ですごそうと思っている。
剣が必要がない時代が来たんだから。
お母さんにはずっと心配かけ続けていたから
しばらくはそばにいてあげたい。
「ねぇ、お母さん、明日お城に行くから、髪の毛切ってくれる?
切りそろえるだけでいいんだけれど
ずっと切ってないから、髪の毛、ちょっとぼさぼさになっちゃった」
「そのままでもいいじゃない」
「だって、明日、お城でドレス着るかもしれないよ。
ドレス着るときくらい、おしゃれしたいし・・・・・・」
「ふぅ〜ん・・・・・・・
チェルトもそういうの気にするようになったのねぇ」
「なによぉ〜〜
今まで、私が全然気にしていない言い方じゃない〜〜」
「はいはい、わかりました。
そこに座って」
「ねぇ・・・・・お母さん・・・・・・
一緒に寝ていい?」
「ちょっと・・・・・・・いい年して・・・・・・」
「だって・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・ほら・・・・・・・
・・・・・・・・来なさい・・・・・・・」
もぞもぞとお布団の中に入る。
あったかいなぁ・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・これからは・・・・・・・・・・・」
「ん?」
急にまじめな声でお母さんが話しかけてきた。
「・・・・・・・これからは・・・・・・・ずっと家にいるんだよ・・・・・ね」
「・・・・・・・・うん」
それを聞いてほっとした表情。
私がまたどこかいくと思ったのかな・・・・・・
「チェルト・・・・・・・」
「なぁに?」
「・・・・・・・・・・よく・・・・・・・・・・・
がんばったね・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・・・」
お母さんに切ってもらったばかりの髪の毛を
優しくなでてもらいながら、私は眠りについた・・・・・・・・
第136話 報告
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